第23章 17歳
「これ… すごく綺麗と思ってお店にあったのを行くたびに見ててね、セールになったときに思わず買っちゃったんだけど。なんか私にはちょっと派手すぎたかなと思っちゃって一度も使ってなかったんだ」
「え! もったいない!」
マヤの思いがけない告白にペトラは眉を高く上げた。
「気に入って買ったものを使わないだなんて、お金をドブに捨てたのと同じだよ!」
「……本当だね。せっかく手に入れたのに眠らせてたら、もったいないよね。ペトラの言うとおりだ…」
しゅんとして反省している様子のマヤに対して、ペトラは笑顔で励ました。
「今の今まではもったいなかったけど、今日とびっきりのお出かけにつけてくんだから最高の使い方だよ!」
「うん、そうだね」
「よしっ、じゃあ着替えなよ」
「わかった」
マヤは着ていた部屋着から、ポールハンガーにかけてあった麻のブラウスと膝丈のフレアスカートに着替える。
ペトラがまとめてくれたサイドの編みこみのハーフアップの髪型。それを彩る白銀色のビーズが輝くヘアコーム。買ったばかりの麻のブラウスに、ふんわりと広がる水色のフレアスカート。
何もかもがフレッシュで、マヤには姿見の鏡の中にいる自分がまるで別人のように感じられた。
「……私じゃないみたい…!」
「なーに言ってんの! どこからどう見てもマヤ。ちょっといつもよりアゲアゲなだけ!」
「アゲアゲって!」
「あはは、でもマヤ。ほんと似合ってるよ、服も髪も。自信を持って、行っといで!」
「ありがとう」
「お土産話、楽しみにしてるから。あっ! 話はいいや。お土産を待ってる、お土産! なんか甘いものがいいな~」
「うん、わかった。何か買ってくるね」
「よろしく!」
そう言って白い歯を見せて笑うペトラに感謝の気持ちをこめて、マヤも笑い返した。