第23章 17歳
「ほぅ…」
ミケの打った相槌はわずかに、からかうような雰囲気が含まれていて。
「確かに執務の礼なら、やましくもなんともないな」
そう判断して澄ました顔をしているミケが、リヴァイには明らか面白がっているように感じられて内心面白くない。
その気持ちが自然とリヴァイの顔を苦虫を噛みつぶしたようにしている。
それを横目で見ながらミケは、マヤに声をかけた。
「良かったな、マヤ」
「はい」
「お前の働きが認められたんだもんな」
緊張と不安を隠しきれない様子で、リヴァイの執務を手伝いたいから許可してくれないかと、マヤが申し出てきたときのことをミケは思い出す。
「はい!」
今、嬉しそうに笑っているマヤを目の前にして、あのとき許可をしなければ… この笑顔は見られなかったに違いない…、執務の手伝いという特別な時間を自分とマヤだけのものにしておきたいという欲望に駆られもしたが、許可して正解だったとあらためて思った。
「リヴァイに何か美味いものでもおごってもらえ」
「はい」
今度の “はい” は少々遠慮がちに、そっとリヴァイの方をうかがっている。
そんなマヤを愛らしいと思いつつもミケは。
「リヴァイ、マヤをよろしく頼む」
その言葉にリヴァイの小さな口が何か言おうとひらく前に。
「休憩は終わりだ」
ミケの宣言を受けて、さっとマヤは立ち上がって片づけを始める。
「………」
ミケに文句の一つも言えなかったリヴァイは眉間に皺を寄せて、黙ってうつむいていた。
……ミケの野郎…。
てめぇに “マヤをよろしく頼む” なんぞ言われる筋合いはねぇ。
こいつは…。
リヴァイは目の前で甲斐甲斐しく食器を片づけているマヤの背を見つめた。
マヤは… てめぇの班員かもしれねぇが、てめぇのモノじゃねぇ。