第23章 17歳
ヒステリックなメラニーを、冷めた風にリヴァイはいなす。
「お前に答える必要はない」
「………」
下くちびるをギリリと噛んで黙って下を向いているメラニー。
くるりとリヴァイは背を向けて、ひとことつぶやいた。
「わかったら帰れ」
それを聞いたマヤも心の中で叫んでいた。
……お願い、帰って! メラニーだけでなく兵長も出ていって!
リヴァイ兵長の恋愛事情など聞きたくないし、変な姿勢でかたまっているせいか脚がしびれてきた。
そろそろ二人とも倉庫から出ていってくれないと、音を立ててしまう。
脚のしびれの限界が少しずつ近づいてくる中、マヤが耳にしたのは期待していたメラニーの出ていく扉の開閉音ではなく、自身の名前だった。
「マヤさんのせいですか?」
「……あ?」
……え? ……なんで私が出てくるの?
訝しげなリヴァイの声と、マヤの心の声が重なる。
「マヤさんのせいですよね?」
「……意味のわからんことを言ってねぇで帰…」
リヴァイの言葉を遮ってメラニーはまくし立てた。
「壁外調査でマヤさんに夜通し付きっきりだったって噂になってます! それに一緒にごはん食べてますよね? 部屋まで送ってますよね? そんなの前はしてなかったじゃないですか。あたし、入団してから兵長のこと見てきたから知ってます。そういうこと、する人じゃなかったのに…!」
「……だから?」
その低い声には、かすかにうんざりしている様子が感じられる。
「俺が誰と何をしようが関係ねぇだろ。俺の何を見ていたか知らねぇが、目を覚ますんだな」
「じゃあ兵長は言いきれますか?」
「何がだ」
「マヤさんは関係ないって!」
目の前で顔を赤くしてわめいている新兵の顔を、どこか遠くに感じながらリヴァイは思った、めんどくせぇと。
「別にマヤは関係ねぇ。くだらねぇこと言ってないで訓練に励むんだな」
「………」
「わかったら出ていけ」