第21章 約束
「……嫌なら無理にとは言わないが」
「あっ、いえ! そうじゃなくって…。なんで… 一緒にかなって…?」
「俺が…」
リヴァイは再び言葉をのみこみかけたが、
「お前と一緒に見たいからだ」
今度は素直な気持ちを目の前にいるマヤに伝えると決めた。
「上からの景色をマヤ、お前と一緒に見たい」
なぜ心を占める声をそのまま、素直に表舞台に出す気になったのだろうか。
きっと… マヤの “ねぇ、兵長…” の声の響きが、丘を優しく撫でるように吹く風の調べに乗って心地良くて。
「……私も一緒に… 見たいです」
聞こえてきたその言葉の熱にうかされて、視線が絡む。マヤの頬は紅く染まっていた。
……兵長が、私と一緒に景色を見たいと言ってくれた…。
聞き間違いかしら?
ううん、確かに聞いた。どうしよう、信じられない。
ちゃんと伝えなくちゃ、私も一緒に見たいと思っていることを。
そして一緒に見たいと言葉になって飛び出した気持ちは、どこへ行くの? このまま丘の風に吹かれて消えてしまわないかしら?
マヤの揺れ動く気持ちをまるでそっと支えるかのように、リヴァイの声が。
「二人とも一緒に見たいのなら決まりだな。次はズボンで木に登る」
「……了解です…。あの、次っていつですか…?」
「そうだな…。そのうちだ」
「そのうちって…。兵長、忘れないでくださいよ?」
「忘れねぇよ」
……忘れる訳ねぇだろうが。本当は明日にでもまたここにやってきて、一緒に景色を眺めていたいのに。
「じゃあ… 約束してくれますか? またここで… この丘で一緒に景色を見るって」
「あぁ、約束しよう」
マヤは思う。
この丘にマリウスと一緒に来る約束は果たすことはできなかったけれども、リヴァイ兵長との約束は必ず。
強い想いを秘めてリヴァイの瞳を覗きこめば、青灰色の瞳にも決して揺るぎはしない誓いが宿っていた。
「……帰るか」
「……はい」
交わした約束を胸に大切に抱えて、リヴァイとマヤは一緒に丘を下りた。
丘の風は二人が去ったあとも優しく、優しく吹いていた。