第21章 約束
間接キスを意識したら急にこみ上げてきた恥ずかしさを抑えて、なんとかマヤは一気に葡萄水を飲み干した。
………。
マヤは、なぜか隣からひたすら飲んでいるところを見つめてくるリヴァイの視線が痛くてたまらなかった。
……私の飲み方って変なのかな?
ごく普通に飲み口に下くちびるをつけて飲んでいるのであるが、あまりにも凝視されるために自信がなくなってきた。
……あれ? オルオみたいに完全に飲み口を咥えてラッパ飲みの方が普通なのかな?
ううん、そんなことないよね?
男の子はあれでいいけど、女の子はお行儀が悪いよね…。
というか今さっき、兵長だって私と同じ飲み方をしていたじゃない。
………?
リヴァイが食い入るように自身の口元に見入る理由が全くわからず、マヤは疑問符で頭がいっぱいになった。
「……あの… 兵長…」
思い切って、訊いてみる。
「私…、どこか変でしたか?」
「……あ?」
リヴァイの眉間に皺が寄る。
「その… すごく見られてましたから…」
途端にリヴァイの様子が変わる。
「……別に見てねぇ…」
ふいと顔を背けてしまった。
……見られてると思うなんて自意識過剰だったかな…。
マヤが余計なことを訊くべきではなかったと反省していると。
「……捨てといてやるから」
その声にはっと気づくと、白い手がすっと差し出されていた。
その様子があまりに自然で、マヤはなんの疑問も持たずにほぼ条件反射で持っていた空き瓶をその白い手に託す。
空き瓶にきゅっとふたをしてリヴァイは、紙袋に入れた。
その数秒後、兵長にごみを渡してしまったことに、マヤは今更ながらに気づく。