第21章 約束
不思議な感覚に身をゆだねていると、甲高い声が上空を切り裂いた。
鳶が騒いでいる。
……チッ、気づかれたか。
ピーッ! ピーッ!と鳴きつづける鳶のただならぬ様子にうろたえるマヤ。さらに木に近寄ってくる。
このままではマヤに見つかってしまう。
……まるで樫の木に隠れて盗み見をしていたみたいじゃねぇか、かっこ悪ぃ。
発見されるよりは自ら姿を現す方が幾分かはマシだ。
俺は飛び下りた。
……なのに、マヤは “落ちた” と言いやがる…。
若干胸糞悪かったが、目の前でマヤが、飛び去っていく鳶に微笑んでいる。その笑顔を間近で見られただけでも、飛び下りて正解だった。
しかしこいつは鳥が好きなんだな。
そう思って問うと “動物はみんな大好き” と笑顔を向けてきた。
……あぁ、昔…。同じことを言っていたやつがいた…。
傷ついた小鳥を抱えて、ファーランと俺の住む部屋に転がりこんできたイザベル。ともに調査兵団に入ったかけがえのない仲間。
そしてファーランとイザベルを思い出すときには必ず…。
一寸先も見えない視界、雨、風、叫び。群がる巨人、殺戮、血、血、血。
……リヴァイの兄貴!
まだ幼さを残していたイザベルの声もよみがえる。
疼いて仕方のない胸に届いたのは、マヤの涼やかな声。
「その人と… 友達になりたかったな…」
……あぁ、イザベルには俺たちしかいなかった。……俺とファーランと。
きっと女の友達も欲しかっただろうに。
「私… その人と仲良くなれたでしょうか…?」
……あぁ、なれたとも。マヤ、お前ならきっとイザベルと仲良くやってくれたにちがいねぇ…。
ありがとうな、マヤ。
イザベルの魂がほんの少しでも救われた気がした。