第21章 約束
それから数日後の執務室。
午後の時間は書類の整理をしているミケとマヤの上を正確に通り過ぎていった。
ミケが壁の時計に目をやる。
「……そろそろ休憩しようか」
「はい」
いつもどおりのやり取りをして、マヤがすっと立ち上がったときにこれまたいつもどおりに執務室の扉がひらいて、リヴァイが入ってきた。
ちらりとマヤに視線を送る。
それを受け止めたマヤは会釈をしてから部屋を出て給湯室へ。
いつもどおりの手順で丁寧に紅茶を淹れて部屋に戻ればミケは新聞を読んでいて、リヴァイはソファの真ん中に座っている。
何もかも、いつもどおりだ。
……そう、数日前にミケ分隊長が “明日も来い” と言ってから、リヴァイ兵長は休憩時間に顔を見せるようになった。兵長のいる風景が、この執務室での当たり前の日常になっていく。
マヤは嬉しい現実に心の中でそっと感激にひたりながら、紅茶を注いだ。
しばらく静かに三人は紅茶を味わいながら、それぞれが思い思いの時間を過ごしていた。
「マヤ」
「はい!」
紅茶の湯気越しにリヴァイをちらちらと見ていたマヤは急に名前を呼ばれて声が裏返った。
「なんでしょう? 分隊長」
「今日のは難しい…」
「……“頭の体操” ですか?」
「あぁ…」
薄いあご鬚に手をやりながら眉間に皺を寄せているミケに、マヤは微笑んだ。
“頭の体操” とはミケが毎日読んでいる新聞に掲載されている、息抜きのコーナーだ。
「今日はどんな問題なんですか?」