第19章 復帰
「だって… すごく面白いから、みんなに読んでもらいたいなぁって…」
「でも誰も興味ないみたいだね」
辛辣なナナバの横槍に、ニファは “うぅぅぅ” と変な声を出して頭を抱えてしまった。
「ニファさん!」
落ちこんでいるニファにマヤは笑いかける。
「私は気に入ってますよ、恋嘘。毎日少しずつ読むのを楽しみにしてました。だから元気出してくださいね」
マヤの方に顔を上げたニファの瞳には涙が浮かんでいる。
「マヤ~! 大好きだよ!」
「私も大好きですよ、ニファさん!」
今にも抱き合わんとするばかりの二人に、ハンジとナナバが不服そうな声を出した。
「ちょっと待ってよ~! ニファの本は興味ないけど、ニファのことは私だって大好きだよ!」
とハンジが叫べば、ナナバも。
「そうそう! 私もニファの本はどうでもいいけど、ニファは愛してるよ!」
「ちょっと二人とも、私の本をけなすのやめてくださいよ~!」
「「「あははは」」」
女性陣が和気あいあいと話しているのを、モブリットは微笑ましく思いながら眺めていた。
そして… やはりモブリットも男であるからして、ついつい目の前の女性たちを “男目線” で見てしまう。
ナナバは文句のつけどころのない男前なスレンダー美人だし、ニファも赤毛のおかっぱで真ん丸な大きな瞳が可愛らしい娘だ。マヤも清楚で綺麗な雰囲気を醸し出してはいるが、つきあっていくうちに何事にも一生懸命で愛らしい子だなと痛感する。
……そして我が親愛なる分隊長は…。
風呂嫌いで髪はボサボサ、巨人のこととなればまっしぐらの、女性としては一見どうしようもない人に思えるが…。
だが俺は知っている、眼鏡の奥にキラリと光る理知的な情熱を。
人類のために、真実を追い求めるその輝きがどの女性よりも美しいことを。
……分隊長、俺はあなたのことを上司として…。
そして…。
モブリットがぼうっと物思いにふけっていると左腕をハンジにぐいっと引っ張られた。
「なにボケっとしてるんだい? 行くよ!」
「え? は?」
気づけばマヤもナナバもニファも昼食を終えて、席を立っている。
「あぁ、はい!」
慌ててトレイを持って、先を行くポニーテールのあとを追いかけた。