第7章 リヴァイ班
その日のリヴァイ班の午前の訓練は、基礎体力訓練だった。
リヴァイ兵長は班員全員が揃ったことを確認すると、会議があるからとエルドに指示を出しあとを任せた。
ハァハァハァ…。
まずはグラウンドを100周走るのだが、30周を過ぎたあたりからペトラは少し息が上がってきた。
走りながらずっと、兵長のあの表情の意味を考えている。
訓練に集中しないといけないことなんてわかっている。
でも… ただ黙々とグラウンドを走りこむだけの単調な訓練では、どうしても様々な想いが脳内を駆け巡るものだ。
ハァハァハァ…。
「ペトラ」
かなり前を走っていたエルドが、いつの間にか横について走っている。
「エルドさん、あれ?」
「お前、一周遅れだ」
エルドは全く息が上がっていない。
「どうした? いつものお前のペースじゃないぞ」
「すみません」
「走りながら小難しい顔するな」
「あはは… そんな顔してます?」
「あぁ。何があったか知らないが、今は訓練に集中しろ。いいな?」
エルドはペトラの目を見据えた。
ペトラは先輩の言葉を、しっかりと受け止めた。
「はい! 申し訳ありません!」
ペトラは本来の自分を取り戻し、ランニングに集中した。
100周を走り終えたら腕立て伏せに腹筋背筋、それにスクワットだ。
それぞれ300回ずつおこなうリヴァイ班ならではの、地獄の基礎鍛錬だ。
班員が基礎鍛錬にかかろうとしたとき、エルドが指示を出した。
「えー、今日の腕立て伏せは “ペア逆立ち” で」
「はぁ!?」
グンタがひときわ大きな声を出した。
エルドがグンタの方を向いて顔をしかめる。
「仕方ないだろ、兵長の指示だ。お前は俺と。オルオはペトラな」
「仕方ねぇな」「うぃーっす」「えー! オルオと?」
兵長が不在だからか、少々の文句が口をついて出る者もいる。
ペア逆立ち腕立て伏せとは、逆立ちをしてペアの相手に足を支えてもらった状態で腕立て伏せをする訓練だ。
全体重が自分の腕にかかるというとても負荷の高いトレーニングで、これもリヴァイ班独自のもの。
今しがたグラウンドを100周したばかりの肉体には相当こたえるメニューだが、 彼らは調査兵団特別作戦班、通称 “リヴァイ班” の精鋭なのだ。
所定の位置につきうなずき合うと、地獄の基礎鍛錬を開始した。