第17章 壁外調査
スペリオル村の臨時の馬繋場は、かつては村の生計を支えていた小麦畑の一部だ。今は調査兵団の馬百頭あまりが、ゆったりと足もとの草を食んでいる。
「ふぅ…」
マヤは額の汗を腕でぬぐった。
「ちょっと休憩…」
ようやく馬の世話が終わった今、腰を下ろして可愛い馬たちを眺めながら重労働の任務を思い返した。
馬の手入れを担当した第一分隊第一班と第二班が、まず着手したことは馬柵を作ること。もちろん臨時であるため、杭を打っただけの簡素なものだ。出来上がった馬柵内に各分隊、各班ごとの馬たちを振り分けた。
次は馬の飲み水の確保だ。それはそのまま人間の飲み水の確保にもつながる。
ミケの指示でマヤは同じ班の新兵、ジョニーとダニエルを連れてハンジのところへ赴いた。
ハンジ率いる第二分隊が井戸の復旧担当だからだ。
村の端にある大きな井戸に近づくと、ハンジ班の全員で井戸の確認復旧作業をしていた。
井戸の底に溜まった泥や砂や落ち葉をさらい、内壁を掃除している。
「ハンジさん、井戸の方はどうですか?」
てきぱきと班員に指示を出しているハンジにマヤが声をかけると、弾んだ声が返ってきた。
「マヤ~! すこぶる順調だよ! 滑車も桶も汚れさえ取り除けば新品さながらさ! 今、底をさらってるからもうすぐ使えるようになりそうだ。これだけ広大な小麦畑があるんだ。恐らくここは豊富な地下水脈があるのだろう。潜ったモブリットが溺れそうなほど水がいくらでも出てきてる!」
モブリットが溺れるの言葉に驚いたマヤは、ジョニーとダニエルの二人と思わず顔を見合わせる。そしてすぐさま井戸を覗きこんだ。