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【リヴァイ】比翼の鳥 初恋夢物語【進撃の巨人】

第16章 前夜は月夜の図書室で


このまま皆が寝静まる深夜まで、ひとりでここにいるはずだった。

………!

かすかに足音がする。階段を上がってくる。廊下を歩く音。資料室を通り過ぎ、確実にここへ向かっている。

静かに扉がひらく音がした。

……チッ。誰か来やがったが、すぐに引き返すだろう。それに…、俺目当てとは限らねぇしな。

そんな風に考えていれば扉が閉められた。

……ほらな、誰もいないと思って帰りやが…。

俺の思考は遮られた。

ランプを灯さずに室内を歩く音が響く。いることがバレねぇように息を潜める。

足音はまっすぐ大きな一枚ガラスの窓に向かっているらしい。

ひたと止まった。

……誰だ? ……何をしている?

様子をうかがうが、皆目わからない。

ソファから起き上がって正体を見たい欲望に駆られたが、万が一気づかれた場合を考慮し抑制した。

すっと鼻から息を吸い匂いを嗅ごうとしたが、やはりミケの野郎とは違って離れていては何も匂わない。

そうこうしているうちに耳が、突如として侵入者の正体を教えてくれた。

俺の耳に聞こえてきた涼しげな声。

何度も何度も勝手に頭の中で聞こえてきたことのある、彼女の声。

そしてその声が漏らした言葉は、あの夕陽の丘で耳にしたのと同じもの。

「……マリウス…」

見つかってもい。ここにいるのを知られてもいい。

マヤの姿を見たくて、そっと覗いた。

マヤは祈るように月を見上げていた。青白く、丸く、夜空に輝く孤高の月を。

俺はその姿を目にした刹那、すべての時間が止まったような錯覚におちいった。

静寂の図書室の暗闇は、白銀の月影に窓辺をゆずり、そこだけ夢幻のようで。

たたずむマヤの髪は月光で輝き、白い横顔は気高くて…。

……綺麗だ…。

そう思った。それしか思わなかった。

ドクンと心臓が跳ねる。

と同時に、どす黒い感情も芽生えた。

マヤがつぶやいた “マリウス”。

いつもいつも、あの丘でも、この図書室でも、あの愛らしい形のくちびるからささやかれるのは “マリウス”。

……クソが!


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