第16章 前夜は月夜の図書室で
「うん。技巧科技術班は立体機動装置の改良や、壁上固定砲などの武器の開発研究に携わっている。しかーし! 彼らが生み出した武器や装置を実際に使用するのは我々なんだ。だから時折ここにやってきては、現場の生の声を拾うんだよ。こっそりやってきては、いつの間にか帰ってる場合がほとんどだから知らなくて当然だよ」
技術班の説明をしているハンジの目は生き生きと輝いている。
「技術班が泊まることも稀にあるんでね、この小屋にはベッドもあるよ。まぁ大体は日帰りだけどね。今は鍵がかかってるけど」
そう言ってハンジが窓に寄ったので、マヤもそれにならって中を覗いた。
確かに二段ベッドがあり、他にも机に椅子、簡易の流し台や小さな食器棚がある。窓からは確認できないが、きっと便所もあるのだろう。
ハンジは窓から離れ、隣接している倉庫の方へ歩く。
「技術班には懇意にしている友人がいてね。私の意見を取り入れて対巨人用の武器や装置の開発に尽力してくれているんだ」
扉の前に立つと、にやりと笑みを浮かべてマヤを振り返った。
「そしてここに、その知力と努力の結晶たちがあるんだ!」
ばーん!と扉を押しひらくと中から、むわっとした埃っぽい空気が流れ出てきた。
ハンジとモブリットにつづいて、中に足を踏み入れたマヤは興味深げに見渡した。
意外と奥行きがあって広い倉庫内は、壁に天井の高さまである棚が設置されていた。そこには一目で武器とわかるものやら、何かの部品のようなものやらが雑多に置かれている。倉庫内中央は棚におさまりきらない大きな物体が鎮座している。
「色々あるんですね。見たこともないのがいっぱい!」
マヤが感嘆の声を上げると、ハンジは満足そうな顔をした。