第15章 壁外調査までのいろいろ
「え~、なんで?」
「まずは座れ」
不承不承な様子で座ったハンジを確認したのち、エルヴィンは切り出した。
「理由は今君が口にしたとおりだ。リヴァイにミケ、調査兵団のトップ二人が抜ければ穴が大きすぎる。捕獲班にとっては至上の人選だろうが、壁外調査は捕獲班だけのために存在してはいない。わかるな?」
「ちぇっ… わかってるよ」
「ならいい。リヴァイ」
がっくりと肩を落とすハンジにうなずくと、今度はリヴァイに話しかけた。
「……お前がどうしても捕獲班に入りたいのならば、班員構成を考え直してもいいが?」
「……あ? てめぇ何を見ていやがった。俺は生け捕りごっこに加わる気なんかこれっぽっちもねぇ」
無表情でそう言いきるリヴァイを見守るエルヴィンの瞳の奥には、どこかからかうような雰囲気が生まれていた。
「見ていたから… なんだが。どうやら勘違いだったようだ。編入したくないならばそれが無論ベストだ。今からまた構成を練り直すのは面倒なんでね」
なんの反応も示さないリヴァイに対してにやりと笑みを送ると、会議を締めくくった。
「……では他に何もなければ、これにて終了とするが…?」
リヴァイは先ほどと変わらず黙っているし、ハンジはリヴァイの捕獲班強制編入に失敗しうなだれている。かろうじてミケが軽くうなずいた。
やれやれと思っているエルヴィンの耳に快活な大声が届いた。
「終わりですかい? じゃあ俺はこれで失礼しますぜ?」
会議中ずっと眠そうにしていたラドクリフは、もう立ち上がっている。どこかへ行きたくてうずうずしているようだ。
おおかた花の手入れをしに花壇へ飛んでいきたいのだろうと予想する。見かけは肩幅の広い屈強な大男だが、花好きで素朴なラドクリフ・キュナスト第三分隊長にエルヴィンはやわらかく笑いかけた。
「あぁ、お疲れ様」
その声に嬉しそうに白い歯を見せ一礼すると、弾かれたようにラドクリフは部屋を出ていった。
その背を見送りながらエルヴィンも立ち上がる。
「解散」
ひとこと告げると、部屋に残っていた者は皆それぞれに出ていった。
……リヴァイのやつ、素直になればいいものを。
エルヴィンはそう思いながらも窓を閉め机上に忘れ物がないかを確認すると、ばたんと会議室の扉を閉め出ていった。