第31章 身は限りあり、恋は尽きせず
シムズは再び、同期のピクシスが出世して今や人類の最重要区防衛の全権を託された駐屯兵団司令となっていることに、くどくどと愚痴をこぼし始めた。それを聞かされているリヴァイは、少々イライラしてきた。
「おい、さっきから黙って聞いていれば同じことばかり言いやがって。ピクシスの爺さんが偉くなって気に入らねぇみたいだが、その一方で実力はある、人情深いと認めている。一体どっちなんだ、いい加減にしねぇか」
「あいつはな、リヴァイ兵長。強くて情もあっていいやつじゃったよ、実際。出世するのも当然だろう。だがな酒好き、女好きの生来の変人じゃないか。あのときだってイヴァンカを…!」
「……イヴァンカ?」
「そうじゃ、イヴァンカじゃ! 兵舎から一番近い店におったわしらの憧れのイヴァンカじゃ。わしらは皆暗黙の了解でイヴァンカには手を出さずにいたのに、あいつは酒に酔った勢いで…!」
どうやらシムズの好きな女をピクシスが奪ったらしい。
だがリヴァイの関心はそこではなかった。
「ピクシスの爺さんも、若ぇころは酔っぱらったのか」
「そこじゃないんじゃ、話の肝は!」
ばんとテーブルを叩いて、グラスの酒をこぼして憤るシムズ。
「わしらのイヴァンカを手に入れておいて添い遂げるならまだしも、他にも次々と美人とみればちょっかいかけおって!」
「………」
「最近では美女なら巨人でも歓迎するなどと…! 正気とは思えん」
その後もいかにピクシスが、女好きで面食いで酒が手放せないどうしようもないやつだとくだを巻いていたが、ふっと淋しそうな顔になる。
「偉くなったらユトピアに顔を見せに来なくなりよって…」
「………?」
「イヴァンカも、たまにはあのつるっぱげに会いたいと…」
「おい、何を言っている。イヴァンカ…? つきあいが今もあるのか…?」
てっきり何十年も昔の訓練兵時代の失恋話を聞かされていると思っていたリヴァイは、眉間に皺を寄せた。