第31章 身は限りあり、恋は尽きせず
「あいつはな、確かに腕は立つ。情にも厚い。なにしろ憲兵団に余裕で行けたくせに、人のそばで人のために働きたいと駐屯兵団を選んだからのぅ」
「……ならば出世したのは当然の結果じゃねぇのか。それより故郷が南だからトロスト、北だからユトピアに配属だと…? そんな離れている者が同じ訓練兵団に入らねぇだろうが」
訓練兵団は東西南北それぞれにあり、住んでいるところに近い訓練兵団の所属となる。故郷が南の者が、東もしくは西の者と訓練兵団が同じになることは地理上ありえる話だが、北の者とは対極にあるため考えにくい。
「わしらの時代は、訓練兵団は中央に一つしかなかったんじゃよ。そして成績上位十人が好きに所属兵団を選択できるという例のアレも、わしらのときは上位二十人じゃった。それが人口が増えるにつれ中央にあった訓練兵団は、まずは南方に移転拡大し、次に東方と西方、そして最後に北方と増えて四か所に分散したのじゃ」
「ほぅ…」
初めて聞く訓練兵団の歴史。
「だから昔々北のわしと南のつるっぱげは、仲良く同じ訓練兵団で汗水垂らしたという訳じゃ」
シムズはまた “つるっぱげ” と言っている。
リヴァイは “そんな大して違いはねぇだろう” とシムズの頭部に目が行ってしまう。
「リヴァイ兵長! 今わしとあいつとじゃ、そんな変わらんと思ったな?」
「いや別に…」
「大いに違うからの? 若いころから比べれば減ったとはいえ、わしは毎朝櫛で整える程度には残っておる。それにひきかえピクシスは、出世して経歴がにぎやかになるのと反比例して頭はさびしくなっていったからのぅ!」
「そうかよ…」
じじぃ二人の頭髪事情など全く興味のないリヴァイは、段々面倒になってくる。