第31章 身は限りあり、恋は尽きせず
ペトラがオルオを伴って食堂に入ろうとしたところ、ちょうど出てきたマヤとぶつかりそうになった。
「あっ、マヤ! どうしたの、もうお昼終わった?」
食べるスピードが人より遅いマヤにしてはめずらしいと、ペトラが訊く。
「うん。訓練が早く上がったから、急いで食べたの」
「そうなんだ。どっか行くの? 兵長と昼休みデート?」
にやにやしているペトラに対して、大真面目に即刻否定するマヤ。
「違うわよ、アルテミスのところに行くの」
「あぁ、明日出発だもんね」
納得したペトラは行ってらっしゃいと手を振って、マヤを見送った。
カウンターから昼食を取って、空いている席を探しながらオルオに訊く。
「そういえば今朝マヤと訓練したんだよね?」
「あぁ」
「どうだった?」
「……寒かった」
「そうじゃなくって!」
そう言いながらペトラは席を見つけて座る。
「追いつけたの?」
「………」
今日こそはマヤに勝てる、そう確信して飛んだオルオだったが、結果はいつもどおりの惨敗。
……情けねぇな。今日は、今日だけは勝ちたかったのによ…。
悔しさと自身への情けなさをひしひしと感じて、オルオは重い口をひらいた。
「負けた」
「あ~、だろうね」
ペトラは感情のない声でそう返すと、いただきますと昼食のパンにかぶりつく。
「………」
せっかくペトラに認めてもらったはずだったのに。
オルオはしょんぼりと肩を落として、パンを口に運んだ。
「風だから」
「……へ?」
唐突なペトラの言葉の意味がわからなくて、オルオは間抜けな声を出す。
「マヤは風だからさ…」
もぐもぐとパンを噛みながら、ペトラはつづけた。
「あとから飛んで追いつく訳ないよ。スピードではマヤにかなわないけど、巨人を討伐する確かなブレードさばきはオルオの方が断然上なんだから」
「お、おぅ…」
……なんだ? ペトラが俺を褒めてる…?
慣れない状況に戸惑いつつも、じわじわと喜びが広がってきた。
「やっぱそうだよな、マヤはスピード、俺は兵長に匹敵するほどのブレードさば…」
「それは言いすぎ、兵長と比べるんじゃないわよ馬鹿!」
最後まで言わせてもらえなくても、オルオは嬉しくてたまらない。