第30章 映る
「それは…」
放してくれたら話すとは言ったが、いざ向かい合って本人を前にして “いい匂いがする” とは恥ずかしすぎて。
マヤが言いよどんでいると、リヴァイが眉間に皺を寄せて顔を近づけてきた。
「おい、言わねぇなら言う気になるまで口をふさぐぞ…」
「えっ…、ん…!」
何がなんだかわからないうちにマヤは、リヴァイに強引に口づけられてしまった。
あまりにも急で予想もしていなかったことにマヤは驚き、その大きな瞳を見開いた。
「んん…、んっ…」
口をふさぐと宣言したとおりにリヴァイはマヤの後頭部をがっちりと押さえつけてきて身動きできない。
やわらかなくちびるを押し当てられて、息ができない。
苦しくて必死で身悶えすれば、密着していたくちびるのあいだにわずかな隙間ができる。慌てて酸素を吸いこもうとしたところへ、リヴァイの強引な舌先が待ってましたとばかりに割って侵入してきた。
「あっ」
気づけばマヤの震える舌はリヴァイの熱い舌にねっとりと絡めとられた。
「ん…!」
まるで絡み合った舌がそのまま一つになったような感覚におちいって、呼吸することも、抵抗する意思も、思考する力さえも奪われていく。
……気持ちいい…。
ろくに息もできずに苦しくて、突然奪われたくちびると口内を蹂躙された恥ずかしさでどうにかなってしまいそうなのに、マヤの身体はリヴァイの激しくも熱い口づけがもたらす快感に素直に反応している。
リヴァイの熱くやわらかい舌はマヤの舌を突き放すと、上あごの裏を舐めまわしてくる。その淫らな感触にマヤの神経は研ぎ澄まされていく。リヴァイの舌が上あごの裏から歯茎にゆっくりと進んで、ついには歯の裏を一本一本丁寧に形を確かめるかのように舐めてきた。
……何これ…、頭がふわふわしてきた…。
マヤがリヴァイの口づけによって天国に昇りそうな感覚になったときに。
「……んんん!」
強烈な甘い痛みに襲われ、思わず涙がにじむ。リヴァイがマヤの舌を再び捕らえて、激しく吸い上げたかと思うとその先端を噛んだのだ。
愛のこもった甘噛みとはいえ、慣れていないマヤには全身がしびれてくるような強い刺激。
……痛いのに気持ちいい。もう何がなんだかわからないわ…。