第14章 拒む

マヤの居室は、一階の一番奥だ。

黙って廊下を進むと、あっという間に部屋の前に着いてしまった。

「ここです」

扉を指さしリヴァイの方に体を向けたマヤは送ってもらった礼を言おうと口をひらきかけたが、すぐに閉じてしまった。

リヴァイが眉間に深く皺を刻み、その三白眼を尖らせていた。

……兵長、やっぱり怒ってる…？

明らかに機嫌の悪そうなリヴァイの様子に、やはり昨夜の失態を叱られるのかと身構えた。

ほんの束の間… 無音の時が流れたが、すぐにリヴァイが打ち破った。

「マヤ…」

「はい」

「お前、いつもミケと… あんなことをやっているのか」

「はい？」

唐突に投げかけられた質問の意味がわからず、マヤも眉間に皺を寄せながら聞き返した。

「だから… いつもミケにああやって嗅がれているのか」

「あぁ… 今日のあれは私の体調が悪かったから、分隊長は調べていただけですよ？」

「そういう問題じゃねぇだろ」

リヴァイの声からは苛立ちが立ちこめている。

「前から思っていたんだが、お前は隙だらけだ」

「………？」

マヤはリヴァイが何を怒っているのかと疑問を抱き、眉間の皺をより一層深くした。

ダン！

その瞬間、何が起きたのか理解できなかった。

大きな音がしたかと思うと自室の扉を背に追いつめられたマヤの顔の横には、リヴァイの両腕が伸びている。

……えっ？

マヤに覆いかぶさるように、リヴァイは扉に手をついていた。

「……マヤ」

数十センチの距離にあるリヴァイの瞳は、怒りとも悲しみとも取れる苦悩の色を浮かべていた。

「無防備すぎるのも大概にしやがれ。ミケはな… 男なんだ」

そうささやきながら、ゆっくりとリヴァイの顔が迫ってくる。

「一緒にしないで！」

気づくとマヤは叫んでいた。