第28章 たちこめる霧に包まれたひとつの星
やはり事前の情報どおりにエリー城跡は村よりも小さな集落であった。廃墟と化しているエリー城と、周囲には小屋のような朽ちた家屋が数軒。恐らく繁栄していた当時は門番庭番の小屋だったものだろう。
タゾロが心配していた野営はどうやら免れそうだ。エリー城は荒れ果てているとはいえ雨漏りはしない程度に城の原型はとどめており、調査兵全員の寝床は確保できそうだからだ。
今回の分担では、見張りと宿営準備を振り分けられた第一分隊。
エリー城をざっと点検しながら巡回し、城のどの部屋にどの分隊を休ませるか決めていく。
三階建ての三階には幹部と第三分隊、二階は第二分隊とリヴァイ班、一階は第一分隊。
そして皆が気持ち良く休息できるように清掃する。さらに井戸水の確保と野戦糧食を分配するまでが宿営準備だ。
第一分隊が宿営準備をしているあいだに、第二分隊と第三分隊が協力して運搬してきた物資の配備を済ませ、馬の手入れおよび荷馬車の整備をおこなう。
遺体回収を請け負うことが多いリヴァイ班だが、今回は死者は出ていない。したがって第二分隊に合流して馬の手入れをしていた。
第二分隊から馬の手入れにまわされたナナバとニファが、簡易に作られた馬柵に馬をせっせと繋いでいるペトラに声をかけた。
「お疲れ! リヴァイ班が馬の手入れとは平和でいいもんだね」
「ナナバさん、ニファさん、お疲れ様です! 本当にそのとおりです。いつも馬の手入れか宿営準備か物資の配備か…、どれでもいいけど、どれかをやっていたいな…。遺体の回収はきついです…」
「だよね…。遺体の回収は危険が伴うからどうしてもリヴァイ班に振り分けられることが多いもんね…」
「はい。でも弱音は吐いてられないですけどね。そんなことしたら死んでいった仲間に顔向けできない。頑張るしかないから!」
ペトラは馬を次々と馬柵に繋ぎながら、笑顔を見せた。