第28章 たちこめる霧に包まれたひとつの星
「おいおい、笑わせるなよ。よくもまぁ次から次へとそんな突拍子もないことを思いつくな!」
タゾロは腹を抱えて笑ったあとに、合点がいく顔をする。
「あぁ、そうか。なんでこのあいだ巨人捕獲班に招集されたのかと少し疑問だったが、今わかったよ。マヤさ、ハンジ分隊長に似てるんだな」
「えっ、似てませんよ! どこが!?」
「いや似てる。だからハンジ分隊長は目をかけてるんだ。そのうち徹夜での研究メンバーにも抜擢されるんじゃないか?」
「嫌ですよ!」
「あれ、意外だな。マヤなら喜んで研究に身を捧げるかと」
「ハンジさんのことは尊敬してますし、研究のお手伝いも頼まれたらしますよ? でも徹夜でやるのは遠慮したいです。モブリットさんもいますし…」
モブリットの名を聞いて、タゾロも “それはそうだな” といった顔をする。
「確かにハンジ分隊長には完全無欠の相棒が控えてるもんな」
「そうでしょう? モブリットさんがいる限り、私はお呼びじゃないです」
「そうかもな!」
同意をしたあとにタゾロは話を “鳥と巨人” に戻した。
「で、おかしな理由はさておき鳥が巨人を避けているとマヤは思っているのか」
「はい。最初はあれ? と思っていただけでしたが、巨人が来るときは鳥がいなくなる状況に何度も遭遇して…。このあいだの壁外調査でも鳥がいないと気づいた途端に信煙弾が上がりましたし、間違いないかと」
「そうか…。何事にも慎重なお前がそう言うなら、そうかもしれん。それは上に報告した方がいいだろうな。よし、あとでミケさんに言うぞ」
「了解です」
「鳥たちが一緒に飛んでくれているあいだは安泰って訳だな」
「ええ、そういうことだと…」
タゾロに大きくうなずきかけたマヤだったが、直感的に異変を感じて空を見上げた。
「タゾロさん! 鳥たちが…!」
「え?」
今までおだやかに同じ方向に飛んでいた鳥が次々と、不自然に90度向きを変えて離れていく。
「おい、まさか…!」
「はい! きっと来ます!」
ドォォォォォ!
二人の予測どおりに信煙弾が上がった、右翼後方から黒が。
「マジか!」
振り返ったタゾロは青ざめる。
「あれか、速い!」
黒の信煙弾とともに姿を現した奇行種は、高速で接近してきた。