第28章 たちこめる霧に包まれたひとつの星
「「「お疲れ様です!」」」
食堂で早速声をかけられる。
カウンターで食事を取ってから複数の声の主が待ち構えているテーブルへ行くと、そこにはリヴァイ班の面々。
腰をかけるやいなや、オルオが能天気な雰囲気丸出しで話しかけてきた。
「マヤ、明日の朝飛ぶだろ? もう使用許可申請書は出してんだけどよ」
そしてリヴァイの方を向いて。
「兵長、申請書を机の上に置いたんですが。行ったときいなかったんで…」
「あぁ、受理している」
「良かった! ってことでマヤ、明日いつもの時間な」
「う、うん…」
マヤは内心ひやひやしていた。
つい先ほどまで、まさにオルオとの早朝自主訓練の件をリヴァイと話題にしていて、マヤには理解できない何かでリヴァイが不機嫌になっていたのだ。
だから食堂に入った途端にその張本人のオルオがいて、こちらの少々ぎくしゃくとした雰囲気に気づくこともなく立体機動訓練の話を振ってくるのは心臓に悪い。
……どうしよう。もっと兵長の機嫌が悪くなったら…。
ちらりと向かいに座るリヴァイの顔をうかがうが、どうやら大丈夫らしい。
……あれ? おかしいな…。
マヤが不思議に思っていると。
「それじゃ俺ら、食べ終わってるんでお先に失礼しま~っす!」
見れば、リヴァイ班の面々の皿は綺麗さっぱり空になっている。
「マヤ、あとで部屋に行くかも!」
ペトラの明るい声が響く。
「了解」
「「お先に失礼します」」
エルドとグンタが礼儀正しくリヴァイに頭を下げ、マヤに向かって笑顔を見せる。
慌ただしくリヴァイ班が出ていったあとに残されたリヴァイとマヤは、自然と顔を見合わせた。
「……オルオに会えましたね」
「そうだな」
「これであの申請書は有効ですね」
「あぁ」
……良かった。申請書が無駄にならなかったから、兵長の機嫌も直ったみたい。
マヤは安心して両手を合わせた。
「では…、いただきます」
食事を始めたマヤを見つめているリヴァイの心の中は。
……これで今夜オルオがマヤの部屋に行くことはなくなったな。
マヤが思っているものとは全然違う理由で機嫌がいいリヴァイも、フッと軽い笑みを浮かべたのちにフォークを手に取った。