第28章 たちこめる霧に包まれたひとつの星
「……あ?」
リヴァイからすれば意味のわからない質問をされて、ますます不機嫌そうな声が低く漏れた。
「しちゃってる… とは?」
「えっとその…、しちゃってるというか、やらかしてるというか、しでかしたというか、しくじったというか…」
マヤはあたふたしながら、思いつく言葉を全部ならべたてた。
その様子が愛らしくて、リヴァイは思わず口元をゆるめた。
「ハッ、なんだそれ…」
おだやかに笑っているリヴァイの顔を見てマヤも自然と笑いがこみ上げてくる。
「あはは…。何を言ってるんでしょうね、私」
「そうだな。何を言いたいのかさっぱりわからねぇ」
二人はしばらく笑い合っていたが、マヤが頬をふくらませる。
「そんなに笑わなくてもいいじゃないですか。大体兵長が変だったからですよ?」
「俺が変?」
「そうですよ。今は違いますけど、さっきまでずっと不機嫌そうだったじゃないですか。だからてっきり私が何か失敗でもしたのかと」
「あぁ…」
自身の不機嫌を指摘されて思いきり心当たりのあるリヴァイは、無意識のうちにその元凶である一枚の書類に目を落とした。
「マヤ、明日の朝… 飛ぶのか? オルオと…」
「いいえ?」
そんなことはオルオから聞いていないとマヤはリヴァイの手元にある書類の方を見る。
「……それ、使用許可申請書ですか? 立体機動装置の」
うなずいたリヴァイの顔色が再び不機嫌そうに暗くなったので、慌ててマヤは否定した。
「オルオから聞いていません。明日… ですか?」
「あぁ、見てみろ」
差し出された申請書を見るために、マヤはソファから立ち上がって執務机まで行く。
「本当ですね、明日になってる」
申請書に殴り書きのようにあるオルオとマヤの名前に、確かに明日の日付。
「オルオはきっと、今から言ってくるつもりなんだと思います。食堂で会ったら食堂で。会わなかったら部屋に言いにくるはず。いつもそうなんです」
「………」
「だからまだ私はオルオから聞いてないけど、きっと明日飛ぶんでしょうね」