第27章 翔ぶ
マヤがあらためて決意したときに、ちょうど兵舎が見えてきた。
リヴァイの顔が引きしまる。
「……俺たちのことはエルヴィンやミケ…、ハンジには俺から話すから、それまでは黙っていろ」
「……了解です」
……なぜかしら?
もしかして私とつきあっていることを隠したいの?
リヴァイの言葉の真意がわからなくて少々不安になるが、すぐに解決した。
「あいつらはろくでもねぇ変態野郎だからな、こちらからきちんと話してケチをつけられねぇようにしたい」
……ちゃんと考えてくれているから、きっちりと報告したいってことなのね…。
二人の関係を大切に想うからこその言葉だと知って、ほっと安堵の息をつく。
正門にさしかかった。通り過ぎながら、
「特にクソメガネには気をつけねぇと…」
とリヴァイが何かを言いかけたときに。
「あぁぁぁ! 帰ってきたぁぁぁ!」
大声で迎えられて思わず幹部棟を見上げると。
団長室の窓から大きく身を乗り出してハンジがぶんぶんと手を振っている。その横にはのそっとミケが立っていた。
「……チッ」
苦々しげに舌打ちをするリヴァイ。
「遅かったじゃないか! すっかり待ちくたびれたよ! マヤと仲良くご帰還ってことはアレだね!?」
「………」
ハンジの大声の質問には無視して、マヤにささやく。
「行くぞ。クソメガネは気にするな」
マヤの手をひいてリヴァイが足早に一般棟の方へ行こうとすると…。
「あぁぁぁ! 早速手なんか握っちゃってぇ! どこに行くんだい? 食堂かな? それは許されないよ。君たちは今すぐここ、団長室に出頭して、我々に洗いざらいムフフ話をぶちまけるんだ!」
じろりと上を睨むリヴァイの冷ややかな声。
「てめぇにそんな話をする義務はねぇ」
「いやあるね! 君たち二人の愛の世界じゃないんだよ、ここは。明日の打ち合わせもあるし、とにかく来るんだ」
足を止めたリヴァイだったが、やはりハンジを無視して通り過ぎようとすると、次に聞こえてきたのはエルヴィンのよく通る声。
「リヴァイ、マヤ。顔を出してくれないか」
いつの間にか団長室の窓にはハンジとミケの他に恰幅の良いエルヴィンも加わっていた。
「……了解」
リヴァイは仕方なく幹部棟にマヤを連れて入っていった。