第27章 翔ぶ
「……俺は頭がいかれたのか? いや耳が腐っちまったのか。条件など出してねぇ、縛ってねぇと言った次の瞬間には、条件を出したのが狙いだと…? ふざけるのはよせ、レイモンド卿」
レイは、リヴァイの眉間の皺がますます深くなるのを見ながら言った。
「ふざけてなんかいねぇよ。条件を出したのは紛れもねぇ事実だが、それでマヤを雁字がらめにしようとは思っちゃいねぇ。オレも…、マヤがオレを好きで、それでOKしてほしいと思っているさ。だが現状はまだ、それが難しいことも知っている。だからどんな手を使ってでもマヤを王都に迎え入れるつもりだ」
「てめぇの気持ちなんかどうでもいい。雁字がらめにする気はないが条件は出した? どうしても結婚したいから、どんな手を使ってでも? それがどれだけマヤを苦しめるのかわかってんのか。そもそもそれでもし、マヤがプロポーズを受け入れたとしても、マヤは幸せじゃねぇし、てめぇだって…、条件があるがために結婚を承諾したマヤと暮らしても幸せじゃねぇだろうが」
レイにはリヴァイの言いたいことが痛いくらいにわかっていた。
「あぁ、そのとおりだ! みっともねぇだろ? 心が自分にない女と結婚するなんてな。わかってるさ、そんなことは。でもどうしても、どんな手を使っても、無様だとあざけられても、マヤは王都に連れて帰る」
「……何を意地になっているんだ。今わかってると言ったよな? 自分に想いのねぇ女を無理やり連れ帰っても仕方ねぇだろうが」
なかばあきれて、はぁっとため息をついているリヴァイに向かってレイは叫んだ。
「わかってねぇのはあんただよ、兵士長! やっぱりあれか、壁外で巨人と戦ってると感覚がおかしくなんのかもしれねぇな。兵士長もマヤが好きなんだろう? いや否定しなくていいから聞けよ! 好きならなぜ平気で一緒に兵舎で暮らせる? 訓練できる? 壁外調査に行ける?」
狂ったようにまくし立ててくるレイ。
「……は? 何を言ってるんだ…?」
リヴァイの声をかき消す、さらなる叫び。
「オレはマヤに死んでほしくねぇんだ! 当たり前だろうが、惚れた女に生きていてほしいのは!」