第27章 翔ぶ
……好きな女!
エルドの直球の言葉に、うつむいて聞いていたマヤは赤面してしまった。
隣のマヤの困り具合がダイレクトに伝わってくるペトラは、すかさずフォローに入る。
「好きな女を見る目? エルドさん、そんなのわかるんですか?」
「わかるさ。前にも言っただろ? 俺はグンタよりは色恋沙汰はわかっているつもりだって」
悪戯っぽく笑うエルドに対して、ペトラも笑顔で返した。
「あはっ、そうでしたね!」
「おいおい、俺だってわかるぞ?」
グンタは不服そうだ。
「いいや、お前はわかってないって。じゃあレイモンド卿とマヤを見てどう思った?」
「………」
グンタは天井を見上げて、そのときの光景を思い返しているようだ。
「……別に。マヤが歩いてるっていうのと、横の男… 真っ白じゃねぇかって思ったくらいだな」
「ほら見ろ、てんで駄目だな」
「そうか? だってよ、白かったじゃねぇか実際…」
口を尖らせているグンタの様子を見て、ゲルガーが笑い飛ばした。
「白いってなんだよ」
イケメンが来たという噂を聞いただけのゲルガーは、レイの白銀色の髪も白のスーツも知らないのだ。
「レイモンド卿は銀髪で、服装も靴まで白に揃えていたんですよ」
エルドがゲルガーに説明する。
「へぇ…。まぁそうだな、髪や服のことしか目に入らんようじゃグンタもまだまだだな」
「何をえらそうに言ってるのよ、酔っぱらいが! 女より酒のあんたが他人にどうこう言えるか?」
横槍を入れてきたのはナナバ。
「なんだと! お前の方こそ女に好かれてばっかだろうが。男とどうこうなるなんて天地がひっくり返ったってねぇだろうな!」
「……勝手に言っとけば。酔っぱらいの相手はしない」
「酔ってねぇわ!」
「………」
「おい、無視すんな!」
ゲルガーとナナバの騒々しいやり取りのおかげで、すっかりマヤとレイの話がどこかへ行ってしまった。