第27章 翔ぶ
「しかしレイさんもよ…」
オルオがパンを噛み切りながら、会話に入ってきた。
「訓練の見学だけでなく、マヤに街を案内させるなんて何がしたいんだ?」
マヤが答える間もなく、ゲルガーの声が飛んできた。
「そりゃアレじゃね? 普通に考えてマヤと遊びたいんじゃねぇのか?」
「それって、その貴族はマヤを気に入ってるってことか?」
アーベルが口を挟めば、ケイジも。
「そういうことだろうな。マヤが王都に行ってからまだそんなに日も経ってないよな?」
「だね」
マヤの代わりに答えたのはナナバ。
「……ってことはマヤが帰って、居ても立ってもいられなくなって追っかけてきたんじゃねぇか?」
「「そうだな!」」
ゲルガーとアーベル、そしてケイジの三人は、レイがマヤ目当てで王都からやってきたと結論づけてご満悦だ。
それを聞いていたオルオがペトラに訊く。
「レイさんってマヤのことを、そんなに気に入ってたのか…。ペトラ、気づいてたか?」
「え~、うん、まぁ… どうだろうね?」
隣のマヤの顔をちらりと見ればひどく困った様子でうつむいている。ペトラはもちろん、プロポーズのことを知っているのではあるが、マヤのために知らんぷりをすることに決めた。
「私は別に気づかなかったかな?」
「そうか…。だよな? レイさんは俺たちみんなに親切だったしよ、普通だったもんな」
薔薇テラスでレイがマヤにプロポーズしたことを知らないオルオは、ペトラの答えに大いに同意した。
「俺は二人が歩いているのを見かけたとき… ぴんと来たがな」
こう発言したのは、オルオの隣に座っているエルドだ。
「どうしてですか? 遠くからしか見てないんですよね?」
不思議そうに訊いてくるペトラに、エルドは即答した。
「遠くからで何を話しているかは聞こえないが…。レイモンド卿の顔は見えたからな。マヤを見る目が…、あれは好きな女を見る目だ」