第27章 翔ぶ
もともと人より食べるスピードがゆっくりなうえに、食堂に遅れて来ている。
気づけば “お先~!” とリヴァイ班が、背後のハンジ班が、そしてアーチボルドが続々と昼食を終え席を立っている。
「あっ、うん。私、食べるの遅いのにぼんやりしている場合じゃなかったね」
急いでサンドイッチを頬張るマヤが可愛らしくて、ギータはそばかすだらけの顔を赤くした。
「ゆっくり食べて大丈夫っす。オレ、マヤさんが食べ終わるまで待ってますから」
「ありがとう」
マヤに話しかけて顔を赤くしているギータを見て、ジョニーとダニエルが少々意地悪くささやき合っている。
「……おい見ろよ、ギータのやつ…」
「あぁ、わかりやすいよな~。失恋しただの、マヤさんと兵長を応援するだの言ってたけどよ…」
二人は顔を見合わせて、声もそろえた。
「「全然あきらめる気なんかないんじゃねぇの?」」
ジョニーとダニエルは、いっひっひと笑う。
そんな二人の様子に一生懸命食べているマヤは気づいていない。食べているマヤを頬を赤らめて見つめているギータも当然気づいていない。
タゾロだけが気づいて “こらっ!” といった顔をして睨みつけた。
結局、マヤが食べ終わるまでミケ班の全員が待った。
「ごちそうさまでした。……すみません、お待たせしちゃって…」
「いいや、どうせ午後からの訓練で一緒なんだ。このまま全員で行けばいいさ」
優しくタゾロが微笑んだ。
「午後からなんだったっけ?」
ダニエルがジョニーに訊いた。
「対人格闘。俺さ、お前と組まされてばっかだから今日はマヤさんがいいな。マヤさん、組んでくれます?」
「……かまわないけど。でも決めるのは分隊長よ?」
「そうだぞ、ジョニー。ミケさんは考えがあってお前とダニエルをペアにしてるんだ。従え」
厳しいタゾロの声に、ジョニーは両手を上げて “了解っす” と観念した様子でつぶやいた。
そうして食堂を出て、訓練場へ向かったミケ班の五人。
いつもの午後の訓練の時間、いつもの対人格闘訓練が始まると誰もが考えていたのだが…。
それは全くの見当違いだった。