第27章 翔ぶ
「マヤ、さっきまでね… そこに兵長もいたんだけど、ハンジさんとラドクリフ分隊長と一緒に団長室に行っちゃった」
ペトラはそう説明してから、リヴァイとハンジとラドクリフが先ほどまで座っていた空席を、くいくいくいとあごで示して教えてくれた。
「……そうなんだ」
「うん。ミケ分隊長が呼びに来たんだ」
「……そうなんだ」
もぐもぐとポテトサラダのサンドイッチを食べながら、マヤは全く同じ言葉を繰り返した。どう反応すればいいかよくわからなくて、昼食に集中しようとする。
「なんか幹部全員緊急招集ってな感じで慌ただしかったよな」
ペトラのはす向かいにいるエルドが言えば、その隣のグンタもスープをすすりながら首をかしげる。
「一体なんだろうな?」
タゾロとマヤの後ろの席にいるのはモブリット、ナナバ、そしてゲルガーだ。
その三人も一斉に話し始める。
「ミケさんの様子はただならぬ雰囲気… ってところだったよな」
「それに比べてハンジさんったら…。行きたくないだの、モブリットさんに代わりに行けだの…」
「ハンジさんもモブリットさんも忙しいんだからナナバ、お前が行けば良かったんじゃねぇの?」
「はぁ? ゲルガー、あんたの方こそ暇でしょうが!」
騒々しい背後の会話で、タゾロの声が聞き取りにくい。
「でも本当になんだろうな? ミケ分隊長が訓練の途中で引き上げていったもんな」
「そうでしたね」
マヤは馬術訓練の終盤で、ミケがタゾロに任せて足早に馬場を出ていった姿を思い出した。
……恐らくその足で団長室に行った分隊長は、何かの事情で食堂にいた兵長、ハンジさん、ラドクリフ分隊長を呼びに来たんだわ。
本当に、何があったのかしら?
「マヤさん、早く食べないと昼休みが終わっちゃいますよ」
ギータの声にはっとする。
幹部全員が慌ただしく団長室に集結しているという事態に気を取られて、昼食に全然集中できていなかった。