第27章 翔ぶ
翌日の午前の訓練は馬術だった。
ミケ班の面々は各自、馬場で愛馬との心身一体を究極の目標とする馬術訓練を終えて、兵舎に帰ろうとしていた。
「おい、マヤ。昼メシに行くぞ」
タゾロがまだ蹄洗場にいるマヤに声をかけた。
「馬ならヘングスト爺さんが手入れするから、馬房に連れていかなくていいと言っていたぜ?」
「そうでしたね。でもちょっと先に行っておいてください」
「じゃあ席を取っておくからな、早く来いよ」
「了解です」
愛馬アルテミスの首すじを熱心に撫でているマヤをその場に残して、タゾロは新兵たちを率いて食堂へ向かう。
道すがらジョニーが話し始めた。
「タゾロさん、マヤさんってホント馬好きですよね?」
「そうだな」
ダニエルも話題に乗る。
「マヤさんはアルテミスにいつも、人間に言うみたいに普通に話しかけてるもんな」
「それな! 俺さ~、そりゃマカリアのこと相棒だと思ってるけどよ。でもマヤさんみたいには馬のこと見れないかも…。やっぱ馬は馬だよな…」
「ジョニー、マカリアと本当の意味で相棒にならないと、壁外で助けてもらえないぞ」
タゾロにたしなめられ、ジョニーは思い出したようだった。
「あぁぁ、このあいだの壁外調査でマヤさんを受け止めてたもんな、アルテミスは」
「ジョニーが弾け飛んでも、マカリアは知らん顔するんじゃねぇか?」
ダニエルにからかわれて、ジョニーは顔を赤くして言い返した。
「お前だってクテー、クテー…、お前の馬の名前なんだったっけ?」
「クテーシッポス」
「言いにくいんだよ! お前の馬。そのクテーシッポスだってお前のこと助けねぇからな!」
「そんなことねぇわ!」
「いや絶対見捨てるって! クテー、クテーなんちゃらなんて名前からして薄情だからな」
「どこが薄情なんだよ! 」
ぎゃあぎゃあと口喧嘩をしているジョニーとダニエルの幼馴染みコンビの前を、タゾロとギータが歩いている。