第27章 翔ぶ
「もう会うことはない?」
「はい、永久にという意味ではないですけど。当分のあいだは会うことはないんじゃないかなと思います。もしまた招待状が来ても、団長もそう何回も王都に行かせてくれないですよね? 訓練のさぼり癖がついちゃいます」
最後の一文は少々おどけた調子で言ってみたマヤ。
「それはそうだな…。招待状が来るたびに王都へ行けば、訓練できなくなってしまう。調査兵として、それは論外だな」
ミケはそう返しながらも “もし頻繁に招待されたらエルヴィンはどう対処するのだろうか?” と考えていた。
マヤの訓練よりも “資金集め” の方に重きを置くのだろうか。
……エルヴィンの考えていることは俺にはわからない。
それなら何も考えずに従うだけ。
今までそうしてきたし、これから先も。
今回のレイモンド卿のマヤへの招待に関する問題も、エルヴィンの判断が最終的には絶対に従うべき正しいものになる。
「今すぐは確かに王都行きはないだろうが…。またそのうち機会もあるだろう。もしそのときにレイモンド卿と顔を合わせるならば、話せばいいさ」
「そうですね」
ミケの執務室でミケとマヤの二人がそうやって不確かで遠い未来について語り合っていたころ、団長室ではエルヴィンが一通の手紙を前に腕組みをしていた。
その封書には立派な封蝋が捺されている。真っ白な蝋のそれは、見事な薔薇模様だ。
言うまでもなく差出人は、白薔薇の貴公子であるレイモンド卿。
ペーパーナイフで開封して書簡に目を通すエルヴィン。
読み進むにつれ、その少々ひとより太めの立派な眉が高々と上がった。
「……これは想定外だな」
思わず心の声が表に出てしまった。
……レイモンド卿が、ここまで本気だとは。
エルヴィンの頭には、しかめ面の部下の顔が真っ先に浮かぶ。
……さてどうするかな、リヴァイは。
何はさておき明日にならないと始まらない。
エルヴィンは手紙を執務机の引き出しにそっとしまうと、何もなかったような顔をして執務のつづきに取りかかった。