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【リヴァイ】比翼の鳥 初恋夢物語【進撃の巨人】

第26章 翡翠の誘惑


「掟… ですか…」

言葉の重みを感じる。

いにしえから王家に仕えてきた一族の、世襲による歴史と記憶の継承。

レイの真剣なまなざしにつられたかのように、同じく真面目な顔をしてペトラがつぶやいた。

「爵位を継承したら、学習院では教えてくれなかった新しい事実とかあるのかな…?」

「さぁ、どうだろうな。アトラスは “因習の名残なだけで継承したところで別になぁんも中身なんかねぇんじゃね?” と言っているがな」

「アトラス…? あぁ、あのラドクリフ分隊長にちょっと似てる…」

アトラス・ロンダルギアはロンダルギア侯爵の子息で、レイの親友だ。ミスリル銀の贋物事件で活躍していたことは記憶に新しい。

グロブナー伯爵の舞踏会で初めてアトラスと会ったときに、ペトラはその人の良さそうな丸顔と巨体を見てラドクリフ分隊長を思い出していたのだ。

「ロンダルギア家はうちの補佐を代々務めてきている。同じく爵位継承の掟があるんだ。オレとアトラスがその掟を知ったのは、まだ鼻水を垂らしていたガキんころだったが、掟を重視しているオレと違ってあいつは最初から “なんもねぇんじゃね?” とほざいていたからな…」

レイの口調は苦々しい。

物心がついたときから、父親から爵位継承の掟を厳かに告げられて、それを胸に刻んで生きてきたレイにとって、いくら親友とはいえ掟を軽んじているアトラスの態度が癪に障るのだ。

そんなレイの顔色をじっと見つめていたマヤは、その心情を汲んで声をかけた。

「レイさんは、バルネフェルト家に伝わる爵位継承の掟を大切に想われているのですね」

「まぁな。絶大な力の爵位を継ぐってぇことは大きな責任もともなうからな…」

「大変ですね…、貴族も」

「あぁ、まったく」

レイは口をへの字に曲げた。

「毎日うまいもん食える貴族がうらやましかったけど、俺やっぱ調査兵でいいかも。伝統とか継承とか責任とか背負うのも簡単じゃねぇもんな…」

そう言ってオルオが神妙な顔をした途端に、ペトラに笑い飛ばされた。

「オルオ、あんた絶対にあとでごちそうを目の前にしたら “やっぱ俺生まれ変わったら貴族がいい!” とか言うくせに」

「言わんわ!」

「言うって! 絶対言うね!」

「じゃあもし言わなかったら俺の勝ちだかグアッ… ガリッ!」

久しぶりにオルオが盛大に舌を噛んだ。


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