第26章 翡翠の誘惑
「マヤ… ご名答、そのとおりだ」
レイは微笑みながら、その広間の扉を押し開けた。
「“戦の間” だ」
そこには戦に用いられる様々な武器の歴史を見ることができる。
木のこんぼうから始まって、石の斧に鉄の槍、鋼鉄の剣。毒を塗られたナイフに、猟師の弓矢、爆発的な破壊力を持つ銃まで。
防具も頭部を守る頭巾から、それが頑丈な兜に発展するまでの歴史が陳列されていた。
鎧や盾は野生動物のなめし革から真鍮、鋼鉄、金銀銅にいたるまで、全部の種類の素材のものが揃っている。
「……何かしら?」
多種雑多の武器に圧倒されながら見学していた三人だったが、ふとマヤの視線がある一角に釘づけになった。
そこにはひときわ豪勢な、ガラス張りのディスプレイケースがあった。他の刀剣や鎧がそのまま床や台の上に置かれているのと違って、明らかに展示方法が異なっている。
引き寄せられるように歩む。
そのディスプレイケースは陽のさしこむ窓ぎわにあった。きらきらとガラスが日光を反射して虹色のプリズムを放っている。
「綺麗…」
まだディスプレイケースの中身は見えないのに、そのケースの外観の美麗さに感銘を受ける。
……こんな美しいガラスケースに入っている武器って…?
マヤが疑問に思ってディスプレイケースをのぞきこむと、そこにはボルドー色のベルベットの生地の台座の上に飾られている一本の短剣が。
「あっ…!」
それは煌めく陽光を浴びて燦然と輝くミスリル銀の短剣だった。
「あのときの…」
「そう。グロブナー伯爵の悪だくみを見事一刀両断、言葉そのままに解決してくれたミスリル銀の短剣は、元の居場所におさまったってぇ訳だ」
レイの説明を聞いて、オルオがそのときのことを思い出しながらつぶやいた。
「……すごかったもんな、この短剣。こんなちっこいのに、あの馬鹿でかい偽物を真っ二つにしてよ!」