第26章 翡翠の誘惑
「マヤ、よく来てくれたな」
「招待してくださって、ありがとうございます」
「あぁ、呼ぶって約束しただろ?」
「ええ。……でも、こんなすぐに招待されるとは思ってもなかったです」
どこかよそよそしく表情もかたいマヤに、レイは苦笑いをする。
「……任務だから仕方なく来てやったって感じだな」
「いえ、そんなことは…」
レイはマヤから、その隣に立つペトラに視線を移した。
「ペトラ、約束どおりマヤと来てくれてありがとな」
「そんな! このあいだはあんなことになっちゃったから、今日はレイさんの主催する舞踏会だし、きっとすごいんだろうなぁって楽しみにしてたんです」
目を輝かせているペトラに、レイは優しく微笑んだ。
「そんな大したもんでもねぇが、存分に楽しんでくれ」
レイは最後にオルオの方へ一歩近づく。
「……オルオだな」
前回のグロブナー伯爵の屋敷では、同じフロア、同じ部屋、同じ事件を共有はしているが、直接個人的には会話をしていないレイとオルオ。
「はい! 俺…」
オルオはレイにいつ礼を言おうかと心の準備をしていたのだ。
……ペトラに言われたからじゃないけど、ちゃんとレイモンド卿に感謝を伝えないとな!
「レイモンド卿、俺まで招待してもらえるとは思ってなかったっす。ありがとうございます!」
少し緊張した様子で頭を下げたオルオに、レイはひとこと。
「オルオ、レイでいい」
「へ?」
「マヤとペトラにもレイと呼ばせている。お前もレイと呼んでくれ」
「……いいっすか?」
「あぁ。堅苦しいのはなしでいこうぜ?」
「了解!」
「それにオレは最初からお前も一緒に招待するつもりだった」
「……そう… っすか?」
なぜ自分も招待するつもりだったとレイが言うのか、全く理由がわからないオルオは不思議そうにしている。
「あぁ。必要だからな」
「……そうっすか!?」
なぜ必要なのかやっぱり理由はわからないけれど、必要とされて嬉しくない訳がない。
自分を必要だと言ってくれる目の前の超絶美男子に、オルオはすっかり好意を持った。