第26章 翡翠の誘惑
考えを巡らせれば巡らせるほど、迷いこんでしまう。
“本当に何も知らないの…” とつぶやいたきり眉根を寄せて考えている様子のマヤを見て、ペトラがばしっと肩を叩いた。
「わかったよ! マヤは何も知らなかったんだね。嘘だなんて言ってごめん」
オルオもへらっと笑った。
「俺らだってリヴァイ班なのによ、知らなかったんだから気にすることないって!」
兵長から何も聞かされていないことを気にしている自分を励ましてくれる二人の気持ちが心にしみる。
「うん、そうだね。ありがとう」
微笑むマヤをさらに元気づけようと、ペトラは。
「私たち三人とも兵長から何も教えてもらってなかったなんて、兵長もあんまりだよね!」
鼻にくしゃっと皺を寄せて、リヴァイのことを少し悪く言ってみせる。
「だよな! 昨日、何事もなく訓練して何も言ってなかったのに、今日同じ船に黙って乗ってるなんてありえないって!」
オルオも同意して、マヤは少々リヴァイが気の毒になってきた。
「きっと兵長にも事情があったんじゃないかな? 私はともかくリヴァイ班のペトラとオルオにも一言もなかったのは確かに変な気もするけど…。エルドさんとグンタさんは知ってたのかな?」
「さぁ、どうだろ…。昨日の様子じゃ二人とも知ってなさそうだったけどな! 今となっては確認のしようもねぇよな」
オルオが首をかしげる。
「そうだね。二人も普通にいつもどおりだったわ。ねぇ… ここでさ、ああだこうだ言っても仕方ないことない? すごい時間の無駄な気がしてきた!」
ペトラは目に見えて苛立ち始めた。
「もう兵長に直接訊こう! ここで待ってたら来るでしょ、そのうち!」
「おぅ、それがいいな! 訊けばサクッと解決。案外、実は招待されていたけど忘れてたとか、あとから招待されたとか結構単純なことなんじゃねぇの? なっ、マヤ?」
「うん、そうだね。訊けばすっきりするね!」
そう言って笑ったマヤの肩を、ペトラは再度ばしっと叩いた。
「よしっ、決まり! 兵長が来るまでなんか食べない?」