第26章 翡翠の誘惑
……あっ!
思いの丈を、つい叫んでしまった。本心であるとはいえ、はっきりと言葉になって自身の口から飛び出していくなんて、恥ずかしいかぎりだ。
マヤが顔を赤くして、ほんの少し言ってしまったことを後悔していると、リヴァイの声が聞こえてきた。
「……そうか」
その声が、いつもの “そうか” より揺らいでいる気がして思わず真正面からリヴァイの顔を見てしまう。
……兵長…、赤い…?
マヤの瞳に映ったリヴァイの顔は、わずかではあるが赤く色づいていた。
………!
そのことに気づいた瞬間に、マヤの顔はもっと、耳の先まで赤く火照る。
向かい合ったまま、互いに赤い顔をして黙ってしまった。
マヤの心の中は軽くパニック状態だ。
……なんで兵長が赤くなっているの?
もしかして兵長…、照れてる?
そんなこと…、ある訳ないよね?
恥ずかしくなるのは私の方だもの。あんな思いきり “一緒に行けるのが嬉しい” なんて大きな声で言っちゃって…。
どうしよう、他の人に聞かれていないかな?
きょろきょろと周りを見渡すが、そばの席には元々誰もいなかったし、離れた席にまだ残っている兵士たちはこちらに注目していない。
……良かった、誰にも聞かれていない… 兵長以外は。
安堵してもう一度真正面のリヴァイ兵長をそっとうかがい見れば、まだ赤い。
二人して気恥ずかしさのまま、次の言葉を探していると。
「やだよ! 二人ともモジモジしちゃって!」
「「………!」」
驚いて声のした方に顔を向けると、マーゴが大股で近づいてくる。
「マーゴさん!」
「お見合いしてるみたいだったよ」
「そんな…!」
「何を話してるか知らないけどさ… マヤ、真っ赤じゃないか。リヴァイ兵長もまんざらでもないみたいだね。ほら…」
マーゴは持っていた皿をテーブルに置いた。
「あたしとジムからだよ、お食べ」
皿にはくし形に切ったすもものみずみずしい果実が、甘い香りを放っていた。