第1章 『その呼び方は尊敬と… 』
【独】
「はあー、食った食った!」
目の前の有栖川は満足げに笑う。
まあ、俺も腹はいっぱいだ。
目の前の空になったトレーや箸を袋に片付ければ、有栖川はにかりと笑いサンキューと俺に声をかけた。
歯磨きをし、スマホを充電器に刺し、いざ寝る体制になる俺たち。
…が、問題発生。
「リーマン明日も仕事だろ?ベッド使えって。」
「年下にベッド譲ってもらうほど年寄りじゃない。」
「ンな意地張ってんなよ!こっちは硬いベンチで野宿なんてザラなんだから使えよ!」
相手にベッドを譲る攻防戦。
年下に気を使わせるなんてしたくないからソファに移動しようとすれば、ため息とともにしゃーねーななんて声が聞こえ、有栖川の腕が俺を抱く。
「っ!何すんだよ!」
「リーマン軽っ!ちゃんと食ってるか?」
「食ってるよ!」
…とは言うけれど、昼をたまに10秒でチャージしたり栄養補助食品で補っている時があるからな…
そんな社畜飯を思い浮かべている間に俺はベッドの上。
丁寧に掛け布団をかけられ文句を言おうとすれば、のそのそと有栖川が隣に入ってきた。
「2人で寝れば文句ねぇだろ?」
広いベッド。
男2人で寝ても余る広さ。
2人で寝ることは可能だ。
「っ!俺はソファで!」
「意地張んねーでこっちで寝ろよ!」
「いいって!しつこいな!」
ばたばたと暴れ、かけてもらった布団とバスローブがはだける。
それを見た有栖川はなあ、と俺に囁いた。
「オッサン、チンコ立ってるぜ?」