第1章 『その呼び方は尊敬と… 』
【帝】
数日ぶりのシャワー。
浴びれるなんて思ってなかったから思う存分浴びさせてもらう。
髪につけたアクセサリーを外し、頭も洗う。
俺は後からで…
なんて言うリーマンを先に風呂に押し込み、その間に少し外に行く。
部屋に戻ってくれば、備え付けのさして素材が良いわけでないバスローブを着て、先ほどまで着ていたスーツをハンガーに掛けファブっているリーマン。
「ハンガー2つ借りたぞ。」
「おう構わねえよ。それとこれ。」
俺の渡した袋を訝しげに覗き込んだ後、不思議そうに俺を見たリーマン。
「牛丼…?」
「腹減ったからな。リーマン飯食った?」
「いや、まだだけど…」
「じゃあちょうどよかったな!」
あったかい牛丼を見て表情を緩めたリーマン。
じゃあもう一つサービス。
「食うのちょっと待ってな、ここサービスで味噌汁あるから。」
「は?コーヒーとかお茶じゃなくて味噌汁かよ。」
「変わってるだろ?オーナーのババアの趣味ってやつだ。」
俺はポットに無料のミネラルウォーターをいれ、スイッチを入れる。
「お湯湧くまで風呂入って来るわ。」
なんて言い、嬉しそうなリーマンを置いて風呂に入りに来た。
流石にそろそろお湯が沸いただろうからさっさと上がるか。
最後に頭からお湯をぶっかけて風呂場を出る。
さっきコンビニから買って来たパンツを履き、肌触りの良くないバスローブを着て外に出れば、リーマンが味噌汁にはそぐわないティーカップにお湯を注いでいるところだった。
「あ…探したけれど味噌汁に合う奴がなくて…」
「ここ、それしかねーんだよ。味噌汁置くんなら茶碗でも置いときゃいいのによ。」
「言えてる。」
今まで申し訳なさそうな顔かラップバトルの時の闘志むき出しの顔しか見たことがなかったからか、口元が緩む姿が新鮮で俺もついつい笑っちまった。
「腹減っちまったな、食おうぜリーマン。」
「リーマンじゃなくて観音坂独歩な?」
リーマンをソファに座らせ、俺は床に座ってメシを食い始める。
買うときに、リーマンはそんなに食えるのかと悩んで買った大盛りをペロッと食ったのには驚いたけど。
よくそんな細い体にンな量入るな。
「社畜はいつ飯食えるかわかんないからな。」
なんて言ってた。
社畜すげー。