第1章 『その呼び方は尊敬と… 』
【帝】
ーーーーーー
俺はいつまで待てばいいんだろう。
行為が終わって息つく間もなく、リーマンは布団の中に潜ってしまった。
しゃーねーからと先にシャワーを浴び戻って来たけれどまだ布団はこんもり丸い。
「おーいリーマン。シャワー浴びねーの?」
声をかけるけれど布団は全く動かない。
さっき開けたミネラルウォーターをポットの横に取りに行き、残った分を一気に煽る。
空のペットボトルをゴミ箱に捨て、冷蔵庫からもう一本のミネラルウォーターを取り出すと丸っこい布団が乗るベッドへと向かった。
「リーマン、水飲む?」
返事、なし。
「リーマン?」
ベッドの端に座り布団を揺するけれど返事はない。
「おーいリーマン!」
流石に返事もらえねえのは傷つくぞ。
「俺のじゃ満足できなかったか?気持ちいいって言わなかったもんなぁ。」
半分冗談、半分本気。
口からぽろりと言葉が漏れる。
まあ、反応なんてもらえるわけねえって思ってたんだけど、突然丸い布団が動き出し、油断していた俺はそのままの勢いでベッドに押し倒された。
「気持ちよくないわけないだろっ!
遠慮なしに腰振ってガンガン奥突いといて!
お陰でケツも腰も痛いんだよ!
明日の仕事に影響出たらどうしてくれんだよ!」
眉間にしわを寄せ、噛み付くように俺に突っかかるリーマンのおっさん。
俺は隙を見て、四つん這いで俺にのしかかるその体を抱きしめ、リーマンを抱き起す。
「で、気持ちよかったのかよ?」
両腕で体をホールドし逃げられないようにすると、先ほどの勢いは何処へやら、眉を下げきょろきょろ視線を彷徨わせる。
「どうなんだよ、独歩サン?」
俺が名前を呼ぶと、うろたえていた瞳が俺の顔に定まり、頬を赤く染める。
そして口を金魚みたいにぱくぱくさせたあと、小せえ声でぽそりと吐き出した。
「きもち、よかった。」
素直に気持ちを吐き出した独歩サン。
照れて俯くその顔にかかる長い前髪を片手でぐいとかきあげてやると、その少しだけ皺の寄った額の中心に小さく唇を落とした。
俺が名前で呼ぶのは
尊敬と、愛情の証。
end