ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第10章 檻の中のLynx
《アッシュside》
おっさんが俺と違う部屋に移りたいと看守に交渉している姿を横目にまずいメシを食う。
その後部屋でおっさんの書いたバナナフィッシュの資料ノートに目をやる。
「なんだ、もう戻ってたのか…散歩でもしてくりゃいいじゃないか」
「くだらねえ、オリの中じゃねえか…」
「そうか…それもそうだな。じゃあな…元気で」
おっさんは荷物を持って部屋を出ていく。
再びノートに目を落とす。
ーーバナナフィッシュをめぐる戦い…
そこには俺があのよく分からない物体を受け取った日のことのことが記されていた。
「よぉ、ハニー」
「!?」
突然声をかけられ、バッと視線をやると図書室で俺をレイプした男が立っていた。
「…なんだよあんた」
「なんだはねえだろ、今日から同居人だぜ?」
…なんだと。
「まあ仲良くやろうや、こないだみたいにさ…な?」
「まっぴらだな。」
「…まあそう言わずに仲良くしようや」
「…1回だけだって言ったろ。あの時。」
「そうだったっけ?しかしそりゃねえぜハニー。」
「俺は医務室に行きたかっただけなんだ。」
外にはいつの間にか冷やかすギャラリーが集まっていた。
「ギャハハ!」
「カーワイー!強がっちゃって」
「医務室だとよォ!またすぐ行けるさ、なあ!」
「頼むから俺を怒らせないでくれよおっさん。俺はあんたみたいな男扱うの慣れてんだ。」
「へえーそうかい。じゃあ扱ってもらおうかっ」
「…いいよ。じゃあ来なよ…
そのかわり、かわいがってくれなきゃあ…やだぜ」
挑発するように、この男をその気にさせるように言う。
「…本気にしていいんだな?…やっぱりお前、ものわかりがいいぜ。」
そう言いながら、頬に手をあてられる。
…さわんなッ
俺はベッドのシーツを男にかぶせる。
そのまま男の首を掴んで壁に向かって走り、鏡に思い切りぶつけてやる。
そして、入口の網に足をかけ登りかかと落としをお見舞いする。
すっかり大人しくなったその男の首を締め上げて
「だから言ったろ…!慣れてる、って!」
「やめろ!やめろ、アッシュ!!」
部屋の外からマックスが必死に叫んでいる。
「ヤツを放せ!ヤツを殺したらおまえ確実に第1級殺人犯だぞ!そんなヤツのために一生棒に振るつもりか!!」
俺はニヤっと笑って男の首から手をパッと放した。