ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第10章 檻の中のLynx
《アッシュside》
「…おせっかいだな、おっさん。」
そう言って俺は部屋を出る。
何度も後ろから俺を呼び追いかけてくる。
「…うるせーな、なんだよ」
「いや、たいしたもんだと思ってさ。もうこれでお前に妙なちょっかいかけてくるヤツはいなくなるぜ。お前は認められたんだ…「お姫さま」じゃなくて1人前の「雄」としてな。」
はぁ…くっだらねえな。
「しかしあれだけのことができるのになぜーー」
「なんだよ?」
「あ…いや、その…わかるだろ?ここじゃ1度ああいう目に遭ったヤツは軽蔑されるんだよ。」
ああいう目?…あぁ、レイプのことか。
「軽蔑?…ふん、笑わせるぜ。「目くそ鼻くそを笑う」ってヤツだな。俺はクズどもに軽蔑されたって痛くもかゆくもねえよ。それは認められようが…同じだ。」
「そうか…そりゃまあそうだな。」
「もう用がねえなら行くぜ?」
「あ、あぁ」
ーーーーーーー
《マックスside》
俺は去っていくアッシュの背中を見送った。
…結構キツイこと言いやがるぜ。
ほんと、グリフィンと兄弟とは思えねえ…。
グリフィンにあの弟の半分の強さがあったら…
「!」
まてよ?…じゃあなんであいつはあの時、
大人しく言いなりになってあんな目に…?
ーーー「頭が痛いんだ、薬くれない?」
ーーー「味がすると飲めないよ」
ーーー「贅沢なやつだな、ほらカプセルだ」
…カプセル!?
そうか!面会ホールでのキス…!
あの俊一の連れの少年!
…あいつやっぱり外部と連絡を!
キスのメッセージか…
なるほど、“お姫さま”なら男の“恋人”がいてもおかしくねえ。
恋人ならキスしたって変に思われねえ…
あいつそこまで計算して…利用したってのか。
たいしたガキだぜ…それにしてもヤツはあのジャパニーズ・ボーイに何を知らせたんだ…?
そういえば…あの少年にはユウコって彼女がいたはず。
いくら友達だって、刑務所にまで女が普通来るか?
チャーリーももちろん承知の上でそこに来たってことだろ…?
そもそも…ただの友達があいつのために泣くか?
この話をアッシュにした時の顔を思い出す。
…そういやどうして傷付いたような顔してたんだよ。
だめだ、話が見えない。
あいつが双方の危険を冒してまで託したなんて…
あの日本人カップルは一体何者なんだ