ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第10章 檻の中のLynx
そろそろ…っと立ち上がりグリフはカーテンの向こうへ行ってしまう。
追いかけなくては…でも足が動かない。
『ま、まって…ダメ…グリ
「グ…グリフーーーー
グリフィンーーーーー」』
私が名前を呼ぶのと同時にある男がグリフを呼んだ。
「ウソだ…死んだはずだ、死んだはずだ…おまえーー」
「う…あんたーー」
グリフの声が聞こえた。
私の足はようやく動き出した。
カーテンをバッと捲ると、目を丸くしたエイジやショーター、オーサーと目が合った。
「あんた…“バナナフィッシュ”ーーエイブリー…」
そうグリフが言った相手は、震える手でその手に持つ銃をグリフに向けた。
まずい…っ!
「う、うわあああっ!よ、よるな!来るなあっ!!」
「!…危ねぇっグリフィン!!」
私は縺れる足でグリフに駆け寄り、両手を広げて目の前に立つ。背の高いグリフの心臓の位置にちょうど私の頭がある。
「ユウコっ!!!!」
ショーターの叫び声が聞こえる。
「うわあああっ!!」
銃を構える男はひどく驚いて、大きく手を震えさせて引き金を引いた。
ドゥン
グリフを守りたい、そう思って前に立ったのに…
弾丸は私の左頬を掠めてグリフの胸を貫いた。
「テメェ!バカヤロー!!!」
オーサーが撃った男に叫ぶ。
ドサッとグリフが倒れる音が聞こえそちらを振り返ろうとすると、腕を掴まれる。
腕の先を見るとオーサーがいた。
「来い。」
グイっと力を入れられ体が傾くが、私から流れる涙を見てその力は弱まる。
「…ユウコ。」
そう名前を呼んで親指で涙と頬から流れる血を拭うと、それをぺろりと舐めて走り出した。
「オーサー!逃げるのか!卑怯者!!」
「またなショーター!…とんだハプニングだったがこのケリはいつか必ずつける!アッシュにそう言っとけ!」
オーサーたちは部屋からバタバタと走り去った。