ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第10章 檻の中のLynx
「アッシュ・リンクスを知ってるな?ヤツがここに出入りしているのはわかってんだ。感謝するぜ小僧。お前がアパートから出た時からずっとつけていたのさ。そしたらここを教えてくれたわけだ。」
エイジをつけてた?
先にアパートを出たのはエイジだから、私が出る頃にはもう見張りがいなかったんだ…。
それにしても、アッシュがここに来ていたことまで知られてるなんて。
「ユウコ・リンクスはどうしてる?」
突然自分の名前が出てビクッとした。
咄嗟にあれ以来会っていないと言ったエイジに舌打ちをしたオーサーはミス・ブランディッシュを人質にエイジから話を聞き出す。
「…預かったものを…受け取るようにって…言われた」
アッシュからそんな言伝を受けていたなんて…まるで知らなかった。
白い粉の入ったカプセルって…もしかして、前マービンに私とスキップを解放すれば場所を教えるとかなんとか言ってたのがこのこと?
「…え、男だけ…?」
「ああ、そうだ。あ?…なんだ?もしやお前ユリの過去のことも知ってんのか。」
「…いや、詳しくは。」
…まってよ。
エイジ、詳しくは…ってなに?
知ってたの?私たちのこと…。
「あいつは、ディノの愛玩ペットだ。それはアッシュもだが、男じゃねえあいつはディノの相手はしない。主に悪趣味なジジイどもの相手と……アァ…もうひとつは俺からは言いたくねえな。いつかアッシュの口から聞けよ。」
言わないで言わないで…
エイジに全てを知られるのが怖くて、私はグリフの膝に顔を突っ伏した。
エイジがディノの元に行って同じような目に遭うだなんて…絶対に許せない。
このままではエイジが…、私はカーテンを開けるタイミングをグリフの膝で考えていた。
突然、撃鉄を起こす音が耳に入る。
「ハラキリすんのはお前の方だぜ…オーサー。」
ショーターだ。
私が顔を上げようとした時、
サラッ
『……っ!?』
私の頭をグリフの大きな手のひらが撫でた。
驚いて顔を見るがグリフの目に光はない。
『…グリフ?』
私の頭から手のひらを離すと、そのまま彼は自力で立ち上がった。