ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第10章 檻の中のLynx
《英二side》
今度は先にお湯を沸かしてくれていたようで、ユウコはすぐにコーヒーを出してくれた。
「(アッシュ、元気そうだったよ。)」
『(…!…あぁ、良かった。)』
「(仲間のこと気にしてた。どうしてるかって。)」
『(そうだよね、私も心配だもん…今あのあたりかなりひどいことになってるらしくて…ショーターのとこも。あっ、ショーター・ウォンって友達なんだけどね。)』
ショーター・ウォンだって!?
そうか、ユウコも当然知り合いだよな。
どうする、伝えるか…
ーーーこのことはだれにも知らせるな
でもこの一文をわざわざ書いたということは、ユウコにすらも知らせるなってことだよね…
『(エイジ?大丈夫?)』
「(…うん、大丈夫だよ。あっそうだ!アッシュもキミに会いたいって。)」
『(え、…ほんと?)』
「(ああ、ほんとさ!今すぐ会いたいって!…ものすごく愛おしそうに言ってたよ!)」
『(…なんか嘘っぽい。そんな気を使ってくれなくていいよ、エイジ。)』
「(嘘じゃないって!)」
キミはアッシュのことがとても好きなんだな。
誰がどう見たって想い合っている2人は消えない過去の傷を背負って、お互いがお互いを傷付けてしまったから…とその芽生えた愛を蔑ろにする。
2人が愛を囁き合う姿を見てみたい。
遠回りをした分、誰よりも幸せになって欲しい。
そのためにもまず僕はアッシュの頼みをしっかりと叶えよう。
ムッとするユウコの唇を見て、
いつかアッシュにしてもらえよ。
男の僕でもクラクラした、
あのキスを。
あれに“愛”が加わったら……
ああ、キミはきっとキスで死ぬんだな。