ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第10章 檻の中のLynx
《英二side》
もう帰る、という時。
アッシュは突然肩を抱いてきた。
僕らは友達だけど、そんな距離感になったことはピンチの時以外は無くて少し驚いてしまう。
「今日は来てくれて嬉しかったぜ…エイジ。」
そう言ったかと思うと、彼はまるで恋人にするかのように優しく僕の髪に指を通した。
思わずビクッと体が反応する。
そして耳をゆっくり人差し指と親指で摘むように触れられた。
な、なんだ?!アッシュ!
…まさかしばらく男だらけの場所にいて変な気を起こしたんじゃないだろうな?
そんなことをパニックになる頭で考えていると
僕の頬に手をあて、アッシュの綺麗な顔が近付いてきた。
「それってどういう……」
もう自分でもなにを言っているのか分からなかった。
次の瞬間、アッシュの唇は僕のに重なった。
え!?なに!?…これってキス、だよな?
僕のことユウコだと思ってるんじゃないだろうな?!
すると、アッシュの舌が僕の唇に触れ少し力強く押し入ってくる。…ディープキス!?
「………………っ!?…」
アッシュの舌が入ってきたかと思うと、一度引っ込めてまた再度入ってくる。
今度は僕の舌を絡めとって……
何かを渡してきた。
…なんだ?小さな、薬?
唇が離れたかと思うと、アッシュのグリーンの目に見つめられた。とても力強い目で何かを訴えているようだった。
きっと今僕の口の中にあるコレに関係しているんだな。
“わかったよ”と応えるように見つめ返す。
アッシュは体を離して、
「じゃあな…Sweet♡」
僕のおしりをギュッと掴んでパチッとウィンクをした。
「…あの、英ちゃん?大丈夫かい?」
イベさんが声を掛けてくる。
「あの…僕、ちょっとトイレ…」
そう言って手の甲で口を抑えると、走り出した。