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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第10章 檻の中のLynx


《英二side》

ユウコが帰ってきて、そのまま僕は部屋に招かれた。

『(コーヒー飲む?)』
「えっ?(あ、ああ…うん、もらおうかな)」
『(2人の時は日本語でもいいかな?って思って…)』
「(うん、そうだね。こっちの方が僕は助かるよ)」

突然日本語で話しかけられて一瞬戸惑ったけど、日本語の方が適した自分の感情を伝えられるのでありがたい。


『(…アッシュさ、どんな感じだった?)』

「(傷はキミも見てるから知ってるだろうけど、…うーん…)」


平和ボケした僕からしたら、彼の傷はひどいものだったとしか言えないけど彼女は消毒と言って傷を舐めていたほどだし、聞きたいのはこういうことじゃないんだろうなとすぐにわかった。


『(どうしたの?)』
「(いや、えっとね…)」

僕はそれよりも、キミたちが過去に想像を絶するようなひどい目に遭っていたんだと思うととても苦しくなってしまう。

そして、アッシュは僕にユウコを頼むと言った。
とても上手に書かれた“佐藤優子”という名前を僕に託して。

スっとメモの入った右ポケットに触れる。


『(もしかして…なんか、言ってた?エイジが困っちゃうようなこと。)』

「(えっ!?いや…そんなことないよ!)」

「(…そう?それならいいんだけど。)」


ピーーーーッ!

ユウコが部屋に入ってすぐに火にかけたヤカンが音を立てる。


『!(……あー、沸いた沸いた!)』

パタパタと走ってキッチンへ向かうユウコ。
そしてコーヒーのいい香りが部屋中に広がって、こちらに戻ってきた。

『(はい、どうぞ!)』
「(ありがとう……わあ、美味しいや!)」
『(ふふ、良かった。)』

ユウコもフーフーと冷ましながら1口飲んだ。

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