ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第10章 檻の中のLynx
《アッシュside》
見るからに不味そうなメシをスプーンで掬うと、目の前に影が落ちる。視線を上げると、
「よお、ニューフェイス」
とジジイに話しかけられる。
「えらく若いな。いくつだい?」
「………」
「…なんとか言えよ、恥ずかしがってんのか?」
何も言わない俺を見て、マックスはストップをかける
「マックス、お前こいつと同じ房なんだって?」
「あ、ああ」
「なあぼうず、俺んとこへ来ないか?そうすりゃ色々いいことがあるぜ?」
「…………」
「な?仲良くしようじゃねえか…」
そう言ってそのジジイは俺の左手を握ってきた。
…気持ちわりィなッ!
自分のトレーを目の前のヤツにひっくり返し、テーブルの上に乗って蹴り上げる。
「気色わりィことすんじゃねえっ!このヤロウ!!」
「グァッ」
それを見たこいつの仲間らしきヤツらも加勢してくる。
「や…やめろ…!やめろアッシュ!!!わああっ!ま、待ってくれ!!みんな待ってくれ!!!おーーい!看守!!」
「やめるんだ!小僧!」
「いてーな!放せよバカヤロウ!!」
看守が入ってきて乱暴に掴まれる。
食堂を出てしばらくそのままグイグイ引っ張られるようにしてたどり着いたのは、反省房と呼ばれるベッドとトイレだけがある薄暗い汚い部屋だった。
「入れ!…今日から3日間ここで頭を冷やすんだ!」
「入ってそうそう騒ぎを起こしやがって!…いいか、よく覚えておけ!ここは少年院とは違う!お前もやがて身をもって知ることになるだろうぜ!」
「連中はおまえには特に“目をかけて”くれるだろうさ!死にたくなければ大人しくすることだ!」
そう言ってドアを勢いよく閉めてしっかり施錠する音が聞こえる。
「…ふん」
先に手を出してきたのはクソジジイじゃねえか…
理不尽すぎて吐き気がするぜ。
…まぁ、いい。
これが手に入った。
俺は食堂で騒動に紛れて腹に仕込んだフォークを眺めた。