ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第29章 Perfect Crime
《アッシュside》
「ムシュウ・ゴルツィネもとんだアルフレッド・ダグラスに惚れたもんだな…」
「よしてくれよ、ワイルドが気を悪くするぜ」
「…いずれにせよ、俺はタコおやじに同情したくなってきたぜ」
「とにかく…これでしばらくヤツを釘付けにしておくことができる、それで……こいつのことを調べて欲しいんだ」
「こいつ?」
「ピーター・グラント、上院議員殺し。この女秘書は“BANANA FISH”で操られたんだ」
「…お前もそう思ってるのか?」
「思ってるんじゃない。そうなんだ。ユーシスが俺にそう言った。では何故こいつなのか?…こいつを消すと得をするのは誰だ?俺が調べるには限界がある…だがマスコミにつてがあるあんたなら…」
「よし…わかった」
ああちょっと、そう言っておっさんはスコッチのダブルを頼んだ。
「東部上流階級がアフター5でもないのに酒を?」
目の前で組んだ腕に顎を乗せながら俺がそう聞くと、おっさんは俺をじっと見つめた。
「すごいヤツだな、お前は…。俺は、初めてお前が恐ろしくなったぜ…」
「……そう?」
「1度に2箇所を攻撃するあざやかな手口といい、あれではさすがのゴルツィネも防戦一方にならざるを得ない」
「………」
「…もしこの世に悪魔ってヤツがいるとしたら、そいつはお前の顔をしてるだろうな」
「……乾杯、“父さん”」