ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第29章 Perfect Crime
《アッシュside》
「ったく、化けやがって」
「お互い様だろ?そのヒゲ似合ってるよ
……“父さん”」
「よしてくれ!お前みたいなデカイ息子がいてたまるか!」
「あんたはフケてるから十分親子に見えるさ」
「ほっとけ!…それにしても、お前の子分ってヤツが来た時はびっくりしたぜ……よく俺たちの居場所がわかったな」
「ほかに行くところがあるか?」
「まあ…そりゃあそうだが…こんな手の込んだ芝居を…シュンイチに気づかれないよう必死だったんだぞ、こっちは…」
「最近おまわりが金髪の若い男を片っ端からぶちこんでるらしい。ヤツらの獲物は身長5フィート9インチ、白人、金髪、目はグリーン、年齢17歳のストリート・キッズのボス……つまり俺だ」
「なに?」
「おまけに小柄で黒髪の日本人の女をつけ回してるって話さ。どうやらタコおやじは市警まで抱き込んだらしいな、なりふり構わず…ってヤツだ」
「ユウコまで…しかしそれじゃ…お前、いい度胸してるなァ。街中の警官がお前らを血まなこで探しまわってるってことじゃないか」
「警官にとっ捕まるほどバカじゃない…見たろう?連中が探しまわってるのは凶悪な不良少年で、カシミアのコートにくるまれ、金持ちの父親とランチを食べる“おぼっちゃま”じゃないのさ」
「…まったくだ、あいつら減俸もんだな」
「しかしタコぼうずとオーサーたちはそうはいかない。その為にあんたの力を借りたいんだ」
「俺の?」
「ランチでもご一緒しながら相談したいんだけど?…“父さん”」
「おごりならな、かわいい“せがれ”」
目を合わせてお互いにふっと笑う。
「…なんだよ、息子におごらせる気か?」
「世の中そんなに甘くないってことを教えてやってるのさ、オイスターはどうだ?」
「いいね、じゃあグランド・セントラルへ?」
「もちろん!オイスターはあそこじゃなきゃな」