ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第10章 檻の中のLynx
《アッシュside》
「よお…マックス・ロボだ。よろしくな」
「アッシュ・リンクスだ」
「…ほんとに若いな、いくつだい?」
「おっさんこそいくつだよ」
「おっさんだと!?俺はまだ33だぞ!!」
「うるせえぞマックス!!!」
外から看守の声が響く。
「あ、はい、すみません」と小さくなるこの男に二段ベッドのハシゴを上りながらさらに続ける
「立派なおっさんじゃねえか」
「…でもほんとにいくつだ?」
「17さ」
「ちぇっ!きたねーな、お前と比べりゃ誰だっておっさんだぜ…故郷はどこだ?親兄弟は?」
よく喋るヤツだ。
「……あんたはおしゃべりだな。」
「ああ、すまん…つい。こうみえてもジャーナリストのはしくれなんでな。好奇心に負けちまうのさ。」
マックス・ロボという名には覚えがあった。
思ったままに感想を伝えると大層落ち込んだ。
今まで住処を変えることなんか山ほどあった。ケープコッドを出た頃なんかはガキだけではもちろん家なんて持てず、外で寝泊まりしていた。枕が変わると眠れない、だなんてそんなデリケートなタチではないのになかなか寝付けなかった。
これからどれくらい俺はこの中にいることになるんだろうか。…ユウコはどうしてる?俺たちの住むあの部屋にはもう戻れていないはずだ。仲間たちの住処に移ったのだろうか…それともオーサーの手下に見つかって…。グリフのこともだ…どうしたらいい?
…ダメだ、こういう時は憶測で悪いことばかり考えちまう。あいつは賢い。簡単に捕まることはありえない。今は無事でいることを信じよう。
ーーーん…。
ふと気付くと起床時間だった。
案外あの後すぐに眠れてしまったらしい。
俺もタフというか、なんというか…
自傷気味にふっと笑った。
その後、同室のマックスというおっさんに所内を案内してやるからついてこいと言われ、廊下に出た。