ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第10章 檻の中のLynx
《アッシュside》
あれから丸一日くらいは経ったのかな。
俺はトイレ以外ベッドにいた。十分な傷の手当ても施され、時間がただゆっくり過ぎていくのを移り変わる窓の景色で感じていた。
コンコンコン
病室のドアがノックされ、警察が入ってくる。
「アッシュ・リンクス、お前を州立フォークナー刑務所に移送することが決まった。」
それは突然だった。
病院着から着替えるように言われ、ベッドの脇にあるチャーリーが面会時に置いていった服に着替える。
例のごとく、両手を拘束された俺は警察の移送車に乗せられた。車内には同じように移送される男が2人いた。
「…何をやらかしたんだ小僧、ムシも殺せねえツラでよ」
「そーいうのが案外殺人鬼だったりするんだぜ…あまりつっぱらねえほうがいいぜ。少年院とは違うんだからな…」
「………」
「ほらやるよ。」
うち1人がガムを1枚投げて寄こした。
到着すると男ふたりに挟まれ、ガムを膨らませながら廊下を歩く。
「おい誰だガムなんかやったのは」
「俺じゃねえぞ、一緒に連れてきたヤツらだろう」
「チッ…つっぱってられんのも今のうちだぜ小僧。」
右側の男がドアをノックすると中から返事がある。
中には偉そうな椅子に座った男がいた。
「ようこそ、アッシュ・リンクス。わたしが所長のワイゼンバーグだ。…お前の資料はひどいものだな…以前なら死刑間違いなしってヤツだ」
俺はわざと音を立てながらガムを噛む
「おまえは『暴動の首謀者になる恐れがある』という理由でここへ送られてきたようだが…ここにいる連中はお前がつきあっていたガキどもとはわけが違う。そこのところをわきまえておくことだ…」
再びガムを膨らませる。
「…連れて行け」
部屋を出て歩き始めると、
「わはーーっ!きゃーわいいっ」
「ぼーやぁ、年いくつぅ?」
牢屋の中から声がする。
「うるせえ静かにしろ!消灯時間すぎてんだぞ!」
看守が怒鳴る。
同じような汚ねぇ部屋が並ぶ中、ある部屋の前で止まった。外から丸見えの扉の鍵をガチャガチャ開け、中に押し込むと腕の拘束を解かれた。
「おい、マックス。新入りだ、仲よくしな。」